ボクの夢よ、どうか醒めないで…。


Eins Sofu Alls.


いっちゃん最初に戻りますよ?

裏・小説系の最初にイクよ?




それは、夢?それとも――――――
だけど、ソレは紛れも無い―――ボクの奇跡だった





プロローグ
(2006/8/12/Satrday)

時報
(2006/8/13/Sunday)

白い影
(2006/8/14/Monday)

視(⇔刺)線
(2006/8/16/Wednesday)

黒い影
(2006/9/2/Satrday)

神隠し
(2006/9/4/Monday)

諱みじく過去
(2006/9/5/Tuesday)


(2006/9/6/Wednesday)

押し入れ
(2006/9/6/Wendesday)

貴方(私)は壁の中
(2006/9/7/Thursday)

ボクの奇跡
(2006/9/8/Friday)





プロローグ

「...もう忘れたの?
頭悪いッッ!!!
だからさ〜...ほら、話してたじゃん???」
もう随分と前になるのかな?
ボクの記憶が、かなり曖昧(あいまい)なせいで
詳しくは説明出来ないんだけど...。
「え〜嘘だぁ〜っ?!!」
「まぁ、別に良いんだけどさ?
けど、アソコ...の...の奴...
それ.........の...確かに...えるんだろうね。」
会話の大事な箇所が、途切れ途切れでしか
思い出せない。
それにボクは、歯痒さを少し感じて、舌打ちをする。
「じゃあ、...ん..調べてよ!!」
アレ???
そうだ、ボクと親しく喋るこの人の顔も
名前も思い出せない...。
どうしたんだろう?
その日は、何かが何時(いつ)もと違っていた
そう、何かが...。

ボクの名前は、『マサヤ
所謂(いわゆる)会社員と言う奴をやっていて
1人で住むには、少し広いアパートに去年から住んでいる。
周りが殺風景なのが玉に瑕(きず)だが
これも、まぁ仕方ないと思いながら
日がな一日を全(まっと)うし、静かに暮らしているのだ。
「がっ....?!!!
ハァハァハァ.....どうすれば....―――
ああぁぁぁぁ....うああああぁッッ!!!」
だが、こので単調と思えた平和な暮らしは―――
長くは続かなかった。
むしろ、何が日常の平和か?っと聞かれたら
ボクには答え様もないの...だが、とにかく
ソレは唐突(とうとつ)に今、牙を剥(む)こうとしていた。

時は―――――
2004年8月12日(木曜日)

それが夢なのか、幻なのか?
だが・しかし、此処からボクの奇跡は始まったのだ...。



時報

ボ〜ンッッボ〜ンッッボ〜ンッッ♫
何処(どこ)の階の何処の部屋にあるのか?
ボクが知るよしも無いが―――
毎日の様に、ボクが引っ越して来てから
柱時計の時報が告げる、この単調で迷惑な音を
聴かされ続けている。
〓時は遡(さかのぼ)り半年以前よりも前〓
2003年12月中旬
「ふぁ〜、ヤッパリ
引っ越しって大変だね...今日は助かったよ、有り難う♪」
東京は12月でも雪が降る心配は殆(ほとん)ど
しなくて済むから、冬でも楽だとか、何だとか
喋りながら、ボクは最後の荷物を部屋の中へと
運び入れて・手伝って貰った友達に玄関で
感謝の気持ちを現した。
「じゃあ、後平気?見られるとマズイモノもあるでしょうから
私達はこれで失礼するわね。
片付いたら教えてね、遊びに行くわ。」
余計なお世話だ!っと内心、思いつつ
鍵を閉め、荷解きを1人開始するボクの気分は
見た目の肉体の疲労とは打って変わり
高揚し、晴れ晴れとしていた。
ボ〜ンッッ!ボ〜ンッ!!
「これから一人暮らしかぁ....
妙にテンション上がるなぁ〜!」
今、良く考えれば
当日からボクの部屋にソレは鳴り響いていたのだが
1日目は忙しくて、それ所か他に気をやる暇もなく
その日は疲れて当然ごとく、熟睡してしまっていたのである。

〓時は舞い戻り...2004年
「そっか...どうりで静かだと思ってたんだよね。」
ボクが引っ越して来てから
数日しても、隣人と思わしき人物は
まったく現れず、そう言えば
不動産屋に空き家だと言われていたのを
すっかり忘れて休日を楽しんでいたボクは、
この突如(とつじょ)の騒音襲来に
少なからず苛つきを覚えていた。
コンッコンッコンッ...。
「あの〜、すいません〜〜〜ねぇ〜!」
暫(しばら)くすると、騒音は部屋の中へと
移り変わり、やがて
ボクの部屋の扉がノックされたのだった。
ガチャリ!
ボクは、不機嫌ではあったものの
グッと堪えて、社会人としての顔、つまり
笑顔で応待した、若干、頬は
引きつっていたかも知れないが。
「お〜、おったおった、あのね
アンタんとこの外に出てる洗濯機あるでしょ?
コレな、お隣さん今しがた引っ越された方。
この人らの、洗濯機が入らんのよ、通れないんだわ
―――だからね
お宅んとこコレ、一旦・玄関に入れて
道、開けてもらえんかね???」
まくし立てるかのごとく
唾を飛ばしながら喋る、この爺さんが大家であり
ボクとしては、進んでトラブルに
関りたくないし、起こしたくも無い。
「....えっ...えぇ
良いですよ...ボクがどかせば良いんですよね?」
これが、大人...と言うか社会人としての返事だと思った。
勿論、内心はとても腹立たしく
笑顔が更に引きつった事は言うまでもないだろうが。
「じゃあ、直ぐ御願いするよ。」
「....解りました〜。」
隣に越して来た一家の為に、何故この
ボクが休日のほがらかで、優雅な時間を奪われてまで
こんな作業をしなければ行けないのか?
そう思い詰めると逆上して、切れそうになるので
努(つと)めてボクは考えないようにし
この下らない、お手伝いを終えて洗濯機を
元の場所へと戻し、お礼の一言も無いのか、っと
横をチラリと睨む様に覗く、すると
来訪者の両親が大家と話しているのが見え
これ以上の面倒は御免だと
ため息混じりに呟いて、ボクは部屋に出戻った。

「疲れた....
ったく、汗もかいちゃったじゃないか...!」
ボヤキが自然と大きくなっていた。
一仕事のせいで、額から一筋の
汗の滴(しずく)が床下へこぼれ落ちると、ほぼ同時に
ボ〜ンッッ!ボ〜ンッ!!ボ〜ンッ!!!
このアパートの何処かの部屋にあると
思われる柱時計の時報が
鳴り響き、ボクの気分を更に不快にさせた。
「もう...これは我慢出来ないな...
あいつも、外で話していた筈だし
聞いた筈...ッッ!!」
そう考えたのが先か、身体が動いたのが先か???
ともかく、ボクの我慢は限界を超えていたらしく
意志のまま歩き出し、気付けば
大手を振って、この場を去らんとしていた―――
「なっ!?...どっッどうしたんですか?!!」
大家を呼び止めて
奴の目の前に立ち塞がっていたのだった。



白い影

「用件が...お話しがあるから、呼び止めたデスが?」
ボクの目が少し、据わっていたのも
あってか、猛暑、蝉の声が響き渡る
通路で大家は狼狽(うろた)えたように口を開く。
「はっ、はい...何でしょうか???」
「引っ越してきてからナンですがね。
部屋に柱時計の時報が、ず〜〜〜っと
鳴っていて、今もなってらしたでしょう?
コレ・非常に迷惑なんですがね???」
呆(ほう)けた様な顔をした後に
一瞬、大家が顔をしかめる。
「...あの恐縮なんですがねぇ...
私には何の事だかサッパリ....。
今まで入られた方々も、そう言った苦情は
出されていないので...それでは、失礼しますよ。」
その顔は、まるで無機質であり
ボクの言葉などは、まるで信じておらず
何処か冷めた目付きで、こう言い放ち
有無を言わせず、歩き進んで行ってしまった。
「まるで...ボクが頭が可笑しくなったみたいな
顔しやがって....。」
ボソリっと呟いて、ボクはすごすごと
部屋へと戻って行くしか無かった...。

その日から、数日が過ぎた・ある夜―――――
何時ものようにエアコンの運転を除湿に切り替え
温度もあまり下げずに寝床へ就き
早めの就寝を迎えていた。
「...クォ〜...クォ〜ッッ...!!」
モノの数分で眠りについたボクの意識は
脳の見る夢の世界へと引きずり込まれて行く。
…だが、それは突然訪れたのだ…
「....ッッ!?(誰..か...居る...。)」
ボクの就寝に使っている
本棚とパソコンのある部屋には
ベランダへと通ずる大窓は無い、そして
このクーラーの効いてる時に
窓を開け放っておくほど、ボクも馬鹿ではない...。
だが、隣の部屋・居間として使用している
その部屋の大窓に引っ掛けている
白地のカーテンが月夜に揺らめくのが
眼鏡を掛けていない状態のボクでも何故か
ハッキリと見えてしまった...。
「あ゛っっ...あっ....!!」
声にならない声しか出ない
意識した事で不意(ふい)に訪れる恐怖と焦りが全身に
ジメッとした汗を這い寄らせて行く。
「ハァハァハァ....。」
泥棒であるなら命が危ないかもしれない、がしかし
ボクの予想は大きく外れている事に
次の瞬間...気付いてしまう、何故なら
その搖れていたモノが、ゆっくりと静かに
だけど確実に、ボクに迫って来る
ソノ姿が見えたから...。

「っっぃい...!!!!!」
悲鳴を上げたい、泣き叫ぶほど
あげてしまいたい、しかし
本当にヒトが恐怖した時は
ヒトは身動きも出来ず
声も出せぬものなのだとボクは
この時、初めて知った。
「.....―――るなぁああああああああああ!!!
ボクの掠(かす)れた叫び声と同時に
ボ〜ンッッ!!!ボ〜ッッンッッ!!!
何時もの時報が鳴り響く、深く目蓋(まぶた)を
閉じていた、この目を開けて
眼鏡を装着し辺りを見回すが...
あの白い影は見えなくなっていた。
「はぁ...ハァハァ...
夢...か....???」
そうであって欲しいと、思った言葉が
思わず口に出ていた。
台所へと向かい、コップを取って
勢い良く注ぐ水道水をくみ上げ、一気に飲み干すと
今の出来事が消して夢でない事を
物語るように脳が刻みつけた鮮明な映像を
ボクは思い浮かべていた、あの白い少女の影を―――。



視(⇔刺)線

心霊現象と呼ぶのが相応しいのだろうか?
ソレが起きた事を誰に相談し、喋る事も出来ず
ボクは初めて、こう言った現象を
語れば自分の心証を悪くしてしまう為
現代の日本では、気軽に見えざるモノの
話しをする事が出来ないのだと、身に感じていた。
「お疲れ様で〜す。
今日はもう上がって貰って結構ですよぉ〜?
ちょっと早い時間ですが、また御願いしますね〜。」
その店のフロアマスターから言われ
ボクは早々に切り上げ、この店を
後にする事にした。
「お疲れ様で〜す。」
着替えを終えて、帰路へとついたボクは
どうしても忘れられぬ、あの出来事を思い返していた。
次は〜***〜***〜ッッ
同時に、誰か・から聞いたこんな話しも
思い出し、ボクは少し身震いしながら
乗り換えの駅で、電車を一旦降りるのであった。
「あぁ、そっか...
んじゃ、教えといてあげるかな?
たった1度でも、強い霊体験するとね―――――
そこから“霊視”の力が付いちゃうんだよね♪

ボクは心霊や恐怖モノが、嫌いと言うワケではない
むしろ、好んでいる方だと思う、しかし
実際に自分が体験するのが
これ程、壮絶な脅威を感じるとは思いもよらなかった...。
「余裕もあるし...お弁当でも買っていくかな?」
などと、呟き・自転車のペダルへと足をかけて
最寄の駅から自宅付近のスーパーに
直進して行った。
「あっ!(ボクの書いた要望署名が効いたな!)」
欲しい商品の要望書へと書き込んでおいたのが
功をそうし、入荷されていたらしい
商品を手にし、会計を終えるとボクは
ホクホクとした笑みを浮かべて自転車を、駐輪所として
扱っている空きスペースへ止め、2階の
自室に歩(ほ)を進めた。
「カギ・鍵〜♪」
アパートの鍵を腰のポケットから取り出しながら
手荷物を持ち、歩きつつ
隣接する向かいの白塗りの一軒家の
少し穴の開いた障子が常に閉まっている窓へと
何とはなしに、目をやり・鍵を使用し、開け放つ為に
ドアノブへ手を伸ばさんとした―――
忘れもしない、その瞬間だった
猛烈で強烈な悪意を、背後からも感じる程の
視線、まるで刺すようなソレがボクの
背中を突き刺し、貫いたのだった...。

「う゛ッッっっ?!!!」
ブワっと吹き上がり、滲む冷や汗が
あの時の恐怖を浮かび上がらせるが、辛うじて
身体は動くようだ...。
素早く、身体を捻り視線の感じた場所を凝視するが
そこには、穴が開いた障子とガラス戸で
締め切られた窓が存在するのみであった。
「...何なんだよ....。」
今の出来事を忘れ様と呟きながらも、ボクは
いつも気にかけない、この障子の穴が
まるで悲痛を叫ぶ、人の顔の形の様に見えてしまい
ゾクリと背筋に寒気を感じて
滑り込むかのごとく、既に鍵の開錠してある
扉を開いて、素早く室内へと身を隠すのであった。
「はぁはぁはぁ...はぁはぁ...早く
シャワーでも浴びないと...ん?」
ボクが部屋へ逃げ込み、汗を流さんと
脱衣場へと向かうと、お隣から内容は解からないが
複数名の声が聞こえ、扉の開くギィッと言う音が
壁が薄い、この浴室に響き渡っていたのである...。



黒い影

「だから、私が尋ねてくるから
キミは子供達を頼むよ?」
悪いとは思ったが興味心を隠せず
今の出来事から心を逃がしたい気持ちもあって
小さい・だが、格子(こうし)が備え付けられた
窓を静かに開けて、シャワーの水の出を
ボクは緩(ゆる)めた。
「ぱぱぁ〜何処行くのぉ〜???」
「ママ〜、パパお外行くの?僕も行きたいッッ!」
男女の幼児と、その行く手を阻むように
母親が姿を現し、父親が行き去るまで
この子供達へと言い聞かせていた。
「ほら、ボ〜ン・ボ〜ンって鳴るでしょ?
時計さんのね、お腹の音を止めて貰うように
管理人さんにパパは、御願いしに行ったのよ。
だから、ね?良い子だからママと一緒に―――
お部屋にいましょうね〜!」
どうやら、向こうの家族も
出所が不明な柱時計の時報に悩まされているらしい。
「.....てことは...
2階じゃないのか...あの音...。」
ソレを大家へと訴えるつもりなのだ。
ボクは手間が省(はぶ)けたと思う反面
アノ数日前の深夜の出来事を思い出し
背筋を凍らせ、早々に浴室から出て行くのだった。

そう言えば、隣にいるものの
時間も合わず、ボクは今日初めて
4人全員を見た事になるのだ。
「へぇ...そんな苦情...あぁ...
でも...オタクらだけなんですがねぇ...。」
数十分もすると、ガタガタと階段を登る
足音と、聞き覚えのある
老人独得の間を持つ喋り方が聞こえ
ボクは、玄関脇へと備え付けられた
台所の上方にある、小窓をそっと開け放つ。
「ともかく、お隣さんかも知れませんが?
私達は、迷惑しているんです!
それに日増しに音が大きくなっているんですよ?!」
会話がボクの耳にもどうにか届く。
「あぁ、思い出した..けどねぇ...
お隣さんからも同じ様な苦情が来ていたけどねぇ...。
このアパートに柱時計を使っている方は
いらっしゃらないんですよねぇ...。」
大家の曖昧で人を喰った様な言い回しに
お隣さんは声を荒げて行く、ボクはその樣子を
何処か他人事の様に見守っていたが、暫(しばら)くして
コレは自分にも関わる事だと思い出し
意を決し扉を開けて、声を掛けた。
「ですから、主人も私も聞いていますし
子供達も....
お隣からも苦情が出ていたんでしょう?!」
がちゃっっ――ッッ!!
「お話し中にすいませんが、気になるお話しだったので
声を掛けさせて頂きました。
こんにちわ、ボクの方の苦情―――
やっぱり、勘違いじゃなかったんですね?」
ボクの突然の訪れに誰もが声を失っていた為
自らが自己紹介し、概(おおむ)ねを
身振り・手振りを混じえ伝えて行く。
「わっ....わかっかりました...
へぇへぇ....でも、暫く時間を下さいませんか...ねぇ?
不動産屋さんを通さないとも...
いけませんのでね」
バツが悪そうに、足早にボクらの前から
逃げ出した大家の狼狽えぶりから
何かがある、ソレだけはハッキリと
理解する事が出来た...。

そう...何かが...

「私共(わたくしども)は、神明(しんめい)と申します。
以後よろしく御願い致します。
都会だからと言ってお隣様にまで挨拶をしていないのは
失礼でした、こちらは妻の鹿波(かなみ)
そして、子供達の麻友梨(まゆり)と真紀(しんき)です。」
皮肉な事に、これをきにして
ボクらは当然であった、お隣さんの顔と名前を覚え
挨拶を交わし・接触を持つ機会を得たのである。
「では、お互い“音”の事で何か解ったら...
それと奇妙な出来...いぇ、何でもありません...。
ともかく、少しでも発見があれば頻繁に
連絡を取り合いましょう、それでは失礼しますね。」
彼らは話し合いを終えると、互いの号室へと
出戻って行く、謎を追うと言う意味合いも兼ていた為
彼は少し興奮気味ではあったが
午前0時には床に就く、しかし床へと就いた頃―――
外部ベランダを執拗に、まるで彼を
監視するかのごとく往復を繰り返す黒い影が
1つ―――――――...。



神隠し

Do you wanna die tonight?
«あなたは今夜、死にたいですか?»
飛び上がるようにして目が覚めると
うあぁッッッッ?!!!!
まだ、時計の針は深夜を指していた。
「はぁはぁはぁ....
“スクリーム”何て夜に見たから?その影響???」
急に明日の...いや、もう今日か...。
今日の仕事がキャンセルとなった為に
この日、8月17日の火曜日は休みになった。
「....汗が酷い...
1度シャワーでも浴びちゃおっかな。」
当然、この休日を無駄にする手は無いと
思い、ボクは昼間にでも
近場の図書館で、このアパート・更に近辺であった
事件や、大家と不動産屋、どちらも
情報収集と題して、調べ聞き探ってやろうと
考えていたのだ。
ピンポ〜ンッッ!!!
呼び出し音が鳴り響き、ボクの名前が
図書館のカウンターで呼ばれた。
「この近辺の未解決事件でしたね?
1件だけ、ご指定の場所で
ソレを取り扱った当時の新聞を発見しました。
当時は―――――
平成2年...1989年8月30日の...
コレです、“謎・幼女失踪〜神隠し?〜”
――の見出しですね。
地域新聞でしか掲載されていなかったみたいですが...。」
そこまで係員が説明するのを待って
後は自分で調べるから、っと釘を刺し
図書館内の個室を借りて、その場を去り
事件と“音”の何らかの関連性を見付けるべく
所謂(いわゆる)探偵が良く行(おこな)うであろう
調査を開始した...。

1989年8月21日・月曜日
この日、自宅であるアパート住まいの
3人家族“瓶成(カメナシ)家”の長女
“瓶成 由嘉里(ゆかり)”ちゃん
当時10歳の行方が夕刻から不明であり
翌日22日の午前1時に、警察へと通報が入った。
錯乱する母親に代わり、父親が
経緯を説明、知り合いの友達の家々にも連絡を入れるも
1人途方に暮れていた所、父親が続き
親戚類を辺り、それでも午前0時を過ぎて
妻をなだめた後の連絡であったと言う。
少女は所謂、鍵っ子で両親は共働きであった為
良く近隣(本当に目と鼻の先)の小学校から
帰宅した後は、荷物を置いて再び友達の待つ
学校の校舎へと遊びに良く出ていた事等が伝えられた。
(当日は夏休みではあったが、プール講習期間の為
小学校自体は開校し、授業もあった事を追記する。)
良く帰宅が遅くなる事の理由から母親が
何等危惧していなかったのが、容易に伺える。
更に警察が調査を進めるも、発見されるのは
現場である自室に放置された、赤いランドセルと
プール用具の一式のみで
靴も消失している所から外部犯行の線を追うが
その日の放課後(厳密には昼過ぎ)、彼女と誰も面会し
遊んでいない事から、自室にて行方をくらました
以外は考えられないっと、行き着き“謎”を残しつつも
近隣の聞き込みや、走査も続くが結局は
“失踪”っと片付けられ、事件はあえなく
未解決のままに、その幕を閉じたのである。
「人々はこれを噂し...“神隠し”っと
呼び...彼女の両親はいたたまれず
数年後、その場所を引っ越した....か....。
(今から15年前の事件...。)」
ゆっくりと、その記事を新聞紙の束から取り出し
コピーをしたボクは、この証拠を片手に
大家をまず問い詰めることにした。
時刻は、もう15時...“音”との関連性は
解らなかったものの、事件現場であるアパートの名前で
決定的な確信に至った・あの深夜にボクの部屋を
訪れたのは...彼女である、っと...。

「どう言う事なんですか?
ハッキリ説明して貰えますか???
と言うか、義務がありますよね。
証拠もしっかりあるし、言い逃れ・出来ませんから。」
確かに強い口調ではあったものの
ソレを抜きにしても
この証拠を前に、大家も観念したらしく
お茶を運んで来た奧さんである、老婆を
下がらせ、ボクを受け付け横の
安い皮の黒いソファーへと座るように促(うなが)した。
「...あぁ、別に隠しとった
わけじゃないんですよ...。
それに、不動産屋さんには私らの方から
伝えてなかっただけで―――」
「ボクは、そんな弁解を聞きに
来てるワケじゃないんですけど?
本題です、本当であるなら“音”の事も
貴方・解ってますよね?」
ボクは彼の狼狽(うろた)えを無視し
続けて、そこから真実を聞き出すことに成功したのだった。
「へっ..へぇへぇ...アンタらを
騙すつもりはなかったし、殺人でないので...
そこだけは解ってくださいよ?...
事件があったんわ...あんたの隣、つまり
2号室なんですわ....。」
「えぇ、解ってます...。
で、あったんですね?」

…その頃、アパートでは…



諱(い)みじく過去

ぼぉ〜っっん!ぼ〜〜〜っっんッッ!!!!
「日増しに大きくなっているな...
お隣さん...彼と隣接している部屋...
俺達の寝室が一番響いているようだ...。」
父親が室内で呟く。
「えぇ、起きたわね...。
けど貴方...だからこそ...なのかしら...
記載していて、私も解かった事があったわ...。」
彼は、わざわざ有給休暇を使用し
今週と来週末までを休みとしたのだ。
「パパ〜、今日からパパ達も夏休み?」
「ママもお休み???」
2人の子供を適当にあやしながら
母親は、少しの間だけ
兄妹で遊んでいてね、っと笑みを見せ
彼らもそれを、疑いもせず頷(うなず)き従った。
「俺達の代わりに―――
調べて貰っているんだものな...。
これ位は、お安い御用だ...。」
「えぇ、で・結果だけど―――――」
前日の話し合いで、子供達を持つ
家族は家での、とある役割を『マサヤ』は指示していた。
その内容は、自分が外回りに出ている間に
“音”のカウントを深夜から任せると言うものであった。
「8時間に8回...
次に2時間に2回....最後に1時間に1回
...これを繰り返しているわ。」
交代交代で、別れてから書かれたノートのメモには
ソレの鳴り始めた時刻と回数が克明に記帳されていた。
「どう言う事なんだい?」
起きたばかりで頭の回らぬ彼は
静かに返答を待った。
「これね...毎時間ごと...なのよ...。
つまりね...あとこれから、3時間後に
8回柱時計の鐘の音が...絶対に響くの...。」
何か、これ以上の首を突っ込み・知れば
取り返しのつかない事になる、何故か
彼はそう思いながらも、真実を求めずには
此処まで来て、いられなかった...。

「あぁ...ありました....
あったともぉ...
あのお嬢ちゃん...漸く、時計の針を読める様に
なって...ううっ.....。」
柱時計は...
それで????」
今やボクのテンションは止(とど)まる所を知らず
走り出した機関車のごとく
高ぶり、考えるよりも先に口が出てしまう。
「あぁあぁ...あの柱時計は...
あぁ...そうだ...瓶成さん達が...引っ越した際に―――
そうじゃよッッ!!!!!
する筈なんぞ、ないんだっっ!!!
あの時計は、捨てたんだッッ!!!!!!」
突然、ガタリっとテーブルを
搖るがしながら立ち上がった老人にボクは
少し不意を突かれたが、慌てずに彼を見据えた。
「“柱時計は捨てた”...確かですね?」
頷いて答える、大家から
これ以上の事実は聞けないだろう
いや知っていたとしても、この錯乱状態の様な
様子では...ともかく、今得た情報を携(たずさ)え
ボクは、自転車のペダルへと足を乗せた。
「お爺さんッッ?!!」
そんな“音”する筈がないんじゃ...
なぁ...解かるじゃろ?!!
あっちゃならんのじゃよぉおおっっッッ!!

彼は自転車を何時もの駐輪場代わりとする
場所へと押し上げると、資料を片手に
このまま、お隣の扉をノックした。
「お待ちしていましたわ...。」
すると、目の下にクマを作った彼女が
姿を現し、旦那は現在・子供のお守りを
していると説明、扉を出て外で
彼らは会話を始めた。
「これが、その資料です...。
そちらの部屋で失踪事件がありました...。
その詳細をボクなりに纏(まと)めたモノです...
それから―――」
「大丈夫です、夫と私で十分ですから
この資料だけで、本当に助かります!」
マサヤが言い終える前に
彼女はニコリと笑って、手渡されたそれを
大事そうに抱え一礼し、号室へと
そそくさと戻って行った。

彼が室内へと戻った...その瞬間だった...。

{ボーーッッンッッ!!
ぼ〜〜〜っっん!!!!!}

一際(ひときわ)大きく柱時計からの
鐘の音が、耳をも劈(つんざ)き
室内へと響き渡り、走り抜ける。
「なん...だ........。
(そうだ...確か...1日に1回だけ
凄い音が...するって...お隣さんが...そう....
ボクが本来はいない時刻に....。)」
思わず両耳を両手で塞ぎながら
彼は、神明家族から聞いていた話しを
思い出すのであった。

その時刻と因果が組み解かれる時―――
悲劇が起こる事等、誰もが
今は知る術も無く.....。




あれから、事件解明への進展は見られず
相変わらず柱時計の鐘は
ボクらを嘲笑うかの様に
鳴り響き続けた。
「...子供達はもう、寝かし付けてあります
これからにでも、私達は大家さんへと
電話をいれるつもりです。」
神明夫妻は、子供を早くに寢かし付けてから
彼の家を訪ね、これまでの独自の調査と
情報から紡(つむ)がれ判明した事を告げる。
「その前に、伝えに来てくださったんですね
有り難う御座います。」
8月20日金曜日の午後20時頃...。
「いぇ、ともかく
連絡が遅くなりました事を最初に謝っておきます...。
それから―――――
ご在宅していない期間の“音”の正体を
我々の独断ですが...推理し・答えを得ました。」
彼らの会話は何処か、現実味を帯びていない
やや曖昧な、不確実さを持ちながら
謎を解く為の口火が、今・切られんとしていたのだ。
「はい...構いません、お聞きします。」
「では....我々は、ほぼ寝ずの番で
“音”を計記し続けました、すると
毎時間ごとに各々――
8回、2回、1回っと言う規則的な周期を
発見しました。」
夫妻は、代わる代わる自分達の発見と
現在までの、この謎を紐解いて行く。
「更に、1日に1回...必ず同じ時刻
鳴り響く“音”を発見しました...。
それが17時50分...この間は
特に大きな音で、今では10分程度鳴り続きます...。」
彼には、大凡(おおよそ)の検討が
この時、既についてはいた、だが敢えて
黙(もく)し最後まで2人の言葉を待っていたのだ。
「つまり....―――」
「やはり...そうなりますね...。」
「えぇ、つまり―――
その時間帯に...瓶成さんのお嬢さんは...
殺されている....。」
突拍子もない、何等根拠も無い
証拠も無ければ、ただの絵空事にしか過ぎない
誰かに喋ろうものなら
鼻で馬鹿にされるのがオチである筈の
この話しを、誰が信じるだろうか???

翌日は、『マサヤ』も休日であり
大家に、判明した出来事を告げると言っていた
夫婦から呼び出された
初老の男性が渋々ながら姿を露(あら)わす場へと
自分も同席する姿が今にも目に浮かんでいた。
「.......。
(大変な事になっちゃったなぁ....。)」
探偵ゴッコの様なものの
延長線上にあったダケの出来事の筈が
紐解いた時には、既に後戻りがで気無い
現実の中で自分がもがいている事に
少しの恐怖と狂気を、彼は感じていた。
「.........。
(.....“音”は...お互いの寝室から
聞こえている...ボクの方はズレているんだろうけど...。
...それはつまり....。)」
何故なら、あの柱時計の鐘の音が
聴こえる場所、その場所こそが―――
少女の眠る床なのだから。

2004年8月21日土曜日
ボクは、この日を消して忘れないだろう。
いや、忘れるはずが無い...忘れられるハズが....。

午前中は用事があるから、午後からと
「じゃあ、大家さんをパパ達は
迎えに行ってくるから」
「大人しく2人で留守番しているのよ???
良いわねッッ?!!」
更に大家へと電話をかけ示談した後、不動産屋とも
相談し、掛け合わなければならないから、っとの
付け加えの連絡があり、約束の時間短縮も兼て
両者を迎えに行く事にした神明夫婦は、子供達を
アパートへと残し、家を出る。
「...今日...はっきりするのかな....」
呟きながら彼は、ザラつく壁の表面を
手の平で擦り、放置されている
目覚まし時計へと、目をやった。
「...4時....もう5時か....
あの人達が戻ってくのが...っっ!?
だが、次の瞬間、彼が視線を壁へと
舞い戻した・その時――――
無機質な壁面に、ソレはまるで脈動して
浮かび上がるかのごとく存在していた。
「うっ...うあぁぁああああッッっっ!?!!!
思わず上擦ずった悲鳴をあげるマサヤだった、が
同時に巻き上がる複数の悲鳴によって
彼は現実へと引き戻されるのだった...。



押し入れ

いっ...いやぁああああああああ!!!
来るな...来るなぁああああ!!!!
聞き覚えのある悲鳴に
彼はハッと我れに返り、再び壁を見つめる。
しかし、そこには今・見た筈の
異形の物凄い形相をした顔は既に
存在していなかったのだ。
「何だ...ちくしょう....
糞っっ....あの悲鳴は、あの一家の―――
子供達の..だよな?!!」
隣の家から、唐突に響き渡る
声にならない枯れた2つの悲鳴が
導き、着の身着のまま
ガチャァッッッゥンっっ!!!!!
室内へと、彼を飛び込ませる、すると
そこで待ち受けていたのは
薄明かりの中で目を血走らせ、息を大きく
荒げながら、幼児達の首を絞める
狂人の姿だった...。

部屋の夫婦の寝室であろう、そこで
饐(す)えた様な、刺激臭を纏(まと)って
夕暮れ時には似つかわしくない
髪の薄いその男は、片方の腕で少女の首を締め上げ
突然の事に動揺しているのか、それに伴う
恐怖からなのか?腰を抜かし、身動きを封じられた
少年へと、正気の沙汰とは思えぬ眼光を放ち
舌なめずりをして微笑んでいた。
ナニを...してやがるうううぅん...
―――だァあああっっ!!!

ドカガカガカガカガガガッッ!!!!!
彼は後先考える間も無く
とにかく、少女から男の手を離させるのを
優先として、自分の予期せぬ来訪に
不意を突かれている瞬間を見計らい
勢いのまま、体当たりを喰らわせて
ともかく、急場で子供達を死守せんとする。
「うっ...げふぉっ....ゲッゲ
ひっく....こぁかぁったぁ...!!!」
「ううっ...ううっ...うう...!!」
咄嗟に自分がこんな行動を起こすとは
彼は、自身でも思ってもいなかった様であった。
「あ...あぁ....。
(....どうするよ...勢いで...
突っ込んだのは良いけど...?!!)」
暫く顔をキョトンっとさせて
いたのだが、逃げ寄って来た2人を見て
この現実に身震いし、冷や汗を流した。
「....から....ブツブッ....
何で....ブツツッ......
....ずっと...我慢していたのに...うォあああああああ!!!
男は虚ろな目でブツブツと
独言を繰り返し、最後には喚き声を上げて
けたたましく『マサヤ』らを怒鳴り飛ばしながら
自らの犯行を吐露(とろ)し始めた。

何を思ったのか?
いや、既に何も考えなど無いのかも知れない。
男は完全に狂っていた、それが
幼児達の眼から見ても明らかであったから...
だから、彼らは黙って
樣子を伺(うかが)い、この狂人の・誰に
喋るとも無く開始された告白を
聞き続け、脱出の機会を狙いをすまし
待つ事が、最良の手段だと本能で悟ったのだ。
「15年だぞ...15年も....
15年の間...俺がどんだけ苦しんで来たか
...不安で不安でたまらなかったのに...
今更になって...ソレを掘り返すような―――
真似しやがって...ッっっ!!!

まるで、たった今・殺害した少女が存在し、その強行を
再現するかのごとく、押入れへと向かって歩み出し
襖(ふすま)を開けて、奧の暗がりの部位。
何も無い空中へと、両腕を伸ばし
物体を掴み上げる様な仕草を見せ
ゆっくりと、その手の平の間隔を縮めて行く。
「絞め..そうか....
(絞め殺して.....だから...なのか...。)」
思わず声に出ていた事を慌てる間も無く
男はうす気味の悪い笑みを浮かべ、沈黙で返した。
そう、それが“真実”である、っと...。



貴方(私)は壁の中

異様な雰囲気が辺りを包み込み
静寂の宵闇が
夕日を墮とさんとしている中で
元凶から、手口が再現されんとして行く。
「おっ...押し入れで
あいつ...可愛かったなぁ...そう、あの子がぁ...
騷ぐからよぉ...ちょっとぉ...
ほんのチョッピっとだけ、力を込めたんだよ...
そうしたら...ぐったりして...ぎゃひひ...」
蝉の声はまだ五月蝿く鳴き続き
本当の恐怖を、身をもって体感し
学習している最中の子供達は
身動き一つせず、声もあげてない。
「し...死体は....」
「あぁ...死体..死体なぁ....
事故だったんだよぉ...俺はぁよぉ...殺す気なんか
なかったんだぁ...なああああああああああああ!!!
信じてくれるよなぁあああああああああ!!!!!

高鳴る心音だけが彼らを
この状況から逃げようと駆られる
意識を、遠ざけるの事を防いでいた。
「....何処に....ハァハァハァ...」
刺激せず、だが会話を続けて
時間を稼ごうとする『マサヤ』の頬を汗が伝う。
「うぎっ..ひひひ....あの子はよぉ...
埋めたんだぁ...“壁の中”に...ひィひいッいい!!!」
男は、自分が首を絞めて
虫の息になった後に、当時補修工事を
行わんとしていた壁の中へと
少女を、生きたまま塗り込めた時の
様子を事細かにニヤつきながら、自らの
武勇伝のごとく語ってゆく...。

「でも何で...今になって
―――また同じ事を...!!!!」
そこまで自分で口にして
ボクは気付いてしまった。
そうだ、そうだったのだ...
この男は“15年”もの間
少女が見付かる事を恐れていたのだ。
そして、何処かこの狂人の眼に
見覚えがあった...。
そう、つい最近まで常日頃感じていた
悪意の目線の正体だ。
つまり、ボクらの行動を―――
「あぁ...焦ったよぉ...げへへへ..
なんせよぉ...隣に住んでいても
毎日毎日来る日も来る日もよぉ...心配で心配でぇ...
――見ろよぉ...おめぇ...このストレスで...
俺..俺の髪の毛もよぉ...大分..抜け落ちてよぉおおッッ!!!?!
テメェらがよぉ...余計な..よヶぃな事さぇ...
しなけりゃぁああああああああああ!!!!
こいつは逐一(ちくいち)監視し、見張っていたのだ。
「...まさか...
大家に..大家に電話したから..なのか??..!!」
この男は、狂人ではあるが
自分を守る術(すべ)を忘れてはいなかった。
「盗聴器って...便利だよなぁ...
オメェラの行動なんざよぉ..筒抜けだったよぉ...〜げひゃひゃ!!」
狡猾(こうかつ)に、劣悪(れつあく)に
2人の両親が出て行くのを見計らって、今再び
別の方向へと事件を向かわせ
証拠を始末しようとしていたのだから...。

全ての吐露が終わらんとすると、時刻は
アノ強力に“音”が鳴り響く
その時へと近付いて行く。
「に...逃げられると思ってるのか?!
........もう証拠なんか隠せないぞッッ!!!」
どのみちよぉ...もう...殺人の時効待ちも
出来ねぇーしよぉ〜〜〜〜おめーらはぁ...
ここで皆殺し何だからよぉ〜〜〜〜!!!

連れて・死へのカウントダウンも開始さ・る。



ボクの奇跡

腰の辺りに備え付けてあった
刃渡り20cm程の牛刀。
それをチラつかせながら
ジリジリと男はボクら...いや、ボクを
追い詰める様に忍び寄った。
「....よっ..寄るな....
オマエはもう...終わりなんだ...この子達の
親がもう..来る!!!!
(はぁはぁはぁ..ハァハァ...)」
それは、恐怖で動けない経験を
既にしている事での冷静さを有している
っと言うのもあるだろうが、時間を稼ごうとする様も
現時点でボクだけが、彼の抑止力として
働き、尚且(なおか)つ
自分にとって、唯一の脅威を持つ大人だからであろう
敵からの、当然の選択であった。
ばっらバラにしてぇ〜〜〜〜
便所から〜〜〜よぉ...流す、なんてのよぉ〜〜
犯ってみたかったんだよなぁ...ギヒヒッッ!!!

動作はゆったりとしているが
ボクをどうやっても逃がす気は
無いのだろう、ココでボクが殺されれば
この子供達も...いや、そもそも
ボクはこんな所で死にたくない...
死にたくない・死にたくない・死にたくないィッッ!!!!
はぁはぁはぁ...!!!
「命乞いする―――
時間なんさ...いらねーよなァ?
ひゃはははァ、神頼みしたってェよぉ...
奇跡なんざァ..オメーにゃぁ起きねェよぉおお〜」
ヴッッっっぅっっんッッ!!!
つぴゅ、っと言う何かが滴る音で
ボクは身体の何処かが斬り付けられ
出血したのだと理解出来た。
「うっ...ひっぎっ?!!!
「何だよ....狙い定まんねぇからよぉ...
あんまし避けなんやぁ....あああ!!!!
ぱきゅぁぁっっ...!!!
空を裂く様に、狂った様に
刃がボクを、時には掠(かす)めて
切り付け、その度にボクは
我れながら情けない嗚咽(おえつ)を上げて
逃げ惑い、仕舞いには台所で
つんのめり、床下へと倒れ込んでしまうのだった。
「死ぬ...?!!!
(はぁ...はぁ...あああ!!!
嫌だ..ボクは・ボクはああああああ生きるン...!!!)」
そのまま、尻餅を付きながら
後退するも逃げ場などもう、存在していない。
自分の荒らい呼吸だけが良く
耳に残り、響く...っと同時に
何か別の“音”が部屋を...いやこのアパート全体と
取り巻いて鳴り響いている事に
ボクは、漸(ようや)く気付けた...。

ボクの奇跡の始まりに

やっぱり...
最初は四肢からイッとこぉなァ...豚みてぇに
してから〜〜〜あいつら刻むとこ見せてやる―――
なぁあ?!!何だ!?この“音”わあぁあ――ッ?!!

{ボーーーッッン!!ボォーーーッッン!!!!}

鳴り響く鐘の“音”、それは―――
「あっ...お姉ちゃん..危ない・よ?」
それこそは―――――
「麻友梨ッ?!
誰と話して...あっ..知らないオネーちゃん...」
少女が男に蹂躙され、殺害されて
“壁の中へと”生き埋めにされた、その日
その時刻を知らせる為に鳴り続けていた
柱時計の鐘の音色であった。
アァ?!!!!!!!
まぁ〜たぁああああああああコロサレニぃいいいいいいい
ショウコにも無く出てきやがったのかァあぁああ!!!!

{ぼぉ〜〜〜〜〜〜っっんッ!!
ぼ〜〜〜っっンッッ!!!!}

17時50分”それから
彼女は数十分の間、生き続けていたのだろう...
一生懸命になって、自分の居場所を
皆に知らせていたのだろう。
「...うっ...―――うぁあああああ?!!!!!
だが、最後の狂人からの凶刃は
既に彼の胸元へと突き刺され―――――

{ぼぉおおおぉぉぉぉっっん♪
ぼぉおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん♫}

穿(うが)たれた刃は、胸をえぐり
今頃は、そこから鮮血が吹き上がっている筈...
だったの、だがしかし――
「...相変わらず馬鹿やってるなぁ...」
………その瞬間!!!!!………
まったく別の刄物が振り下ろされ、それを打ち砕く。
つまり、唐突に眼前へと姿を現した
見知らぬ誰かが、彼の命を救ったのだ。

白い影の様な少女が、狂人を指差し
指し示す場所の先には、何時からか・何処からか
定(さだ)かでは無い、が・今そこには確実存在する
何者かの、その姿があった。
「あっ...あぁ...
(ボクは...知って...る...でも...
思い出せない...誰...???)」
その人物の両手の甲は、突如出血し
小さな球体ほどが通り抜け出来そうな
穴が開く、っと同時にその中心より
煌(きら)めき迸(ほとばし)る
眩(まばゆ)き閃光が放たれ、ソレらはやがて収束し
状態を変化させ剣(つるぎ)を生み出す。
なっ...なんなん―――――
「刺したと言う事象は既に過ぎ去った。
........良くやった...
『マサヤ』にしては上出来...かな?
ッ...ソード...“ソール・ブレイク”ぅうっっッッ!!!!!」
じゃこぉおおおおおおおッッっっん!!!!!!!
そして、ボソッと何かを呟きながら
人物からの剣は、素早く振るわれ
男の身体を斬(き)り伏せる。
「君は....誰...?」
「心は粉砕した、あとは然(しか)るべき
裁きを...さぁ、あーたも、もう上に...ね?」
少女の形を保っていた影は
一瞬だけ笑みをこぼした様に見えた。
彼の質問には応えず、既に
人物の姿は忽然と消え去って居たのだった。
「おぃ!!!
この部屋ん中だッォツ確保しろ!!!!!!!!」
やがて同時に駆け込んで来た
近所からの通報を受けし、警官隊と
子供達の両親と、大家と、不動産屋が
彼らを見付け・様子を見て、悲鳴とも歓喜とも
つかない様な声を上げていたが、3人にとっては
そんなものは、どうでも良かった。

〓悪夢は―――
もう終わりを告げていたのだから!!〓





エピローグ

踏み込んで来た警官隊から
何故か、ボクは確保され
心外にも現行犯として捕らわれてしまう。
「大変申し訳御座いませんでした!!!」
しかし自身の猛烈な抗議と、子供達の証言
現行の犯人が存在する事で
ボクは保釈され、事なきを得た...。
「いんやぁ...神明さん夫妻が電話を
掛けて来た時は...
一時期はどうなる事かと
思いましたよぉ...無傷でよかったですナァ、ははは!」
そう...ボクはあれ程
切り刻まれていた筈なのに無傷だった。
それが、逮捕手前に繋がったのかも
知れないが、今では良く解からずにいる。
「おぃ!!見付かったぞッ!!!!」
夕闇が訪れんとしていた、矢先に
ボクの部屋と神明家を隔(へだ)てていた
壁の中のより瓶成家の少女の白骨死体が
掘り出された、15年後の8月21日...漸く
彼女は、あの狭い壁の中より解放されたのだ。

その後、ドタバタと騒ぎはあったものの
マスメディアもそれなりの
日数が過ぎたのちに姿を消した。
「ふぁ〜〜〜!!!
...よし...行くか...!」
ボクはまた、あの単調で、だが
平和な生活を手にした...筈だった...。
「最近有名なネットゲー先輩は
PCあんのにしてないんデスよね?
あっ、それより先輩聞いて下さいよ!
ここのねデパートの...薬品売り場の2階で...」
「ウチのは旧式だから...て、なにぃ?幽霊???
そんなの気にしなきゃ平気だって!」
ボクはこの時、ふと誰かが昔教えてくれた
とある事を再び思い出した。

1度でも、強い霊体験すると
そこから“霊視”の力が付いてしまう

っと言うソレを...背後に何らかの気配を感じながら。



後書き

・2年前の構想をちょっと変化させて
書き換えてみました。
様は、その時からのリメイクになるわけですが
まっ、大本は今回の物とは
変わらないです、四肢と首チョンパが
なくなった程度で(笑)
主人公は殆(ほとん)ど、容姿も
イラストで、と言う事にしました。
今回に限り、何ですけどね(^〜^)
取り敢えずは矛盾点はあるものの、終われて
良かったッスかね?

・柱時計の謎を紐解いて行く辺りから
作者が飽きてまして
こればかりは、テンション上がらないなぁ〜っと
思っていたら、非現実的になり始めた辺りと
韻を踏まなくなった辺りで
煩(わずら)わしさから解放されて
かなり自由に書けて楽しかったです(爆)
そもそもの、束縛が
何だか文章のつまらなさを産んでいたわけですから
見直しも途中から止めて、完成してからに
移行しました、よって手直し
してない現在はまともに読めたものではないでしょう。
多分...( ̄〜 ̄;)

・さて、本編内容ですが
大学編と言うか、別途のH・Pを
知らないと繋がらない仕掛けが満載です。
まっ、知らなくてもクラスフィの方の
終わりを見れば、同じ様な
終わり方なので解かると思います。
けど、その辺は、ここでは
どうでも良いので割愛します、がね?
兎にも角にも、タイトルの通り
たった1回ッきりの奇跡です、それが
後にどんな事を及(およ)ぼすのかは
解かりませんが、主人公のみぞ知る、で
おぃらは丁度良いと思っております。
それでは、長らくお付き合い下さいまして
有り難う御座いました、これにて
“ボクの奇跡”は終わります、また次回を
宜しかったら、お楽しみにして下さいませ。



Fin since,2006/9/8/Friday


お気楽楽勝の最初へ・・・。



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