いっちゃん最初に戻りますよ? 裏・小説系の最初にイクよ? |
ーそれは、夢?それとも―――――― だけど、ソレは紛れも無い―――ボクの奇跡だったー |
『プロローグ』 (2006/8/12/Satrday) 『時報』 (2006/8/13/Sunday) 『白い影』 (2006/8/14/Monday) 『視(⇔刺)線』 (2006/8/16/Wednesday) 『黒い影』 (2006/9/2/Satrday) 『神隠し』 (2006/9/4/Monday) 『諱みじく過去』 (2006/9/5/Tuesday) 『顔』 (2006/9/6/Wednesday) 『押し入れ』 (2006/9/6/Wendesday) 『貴方(私)は壁の中』 (2006/9/7/Thursday) 『ボクの奇跡』 (2006/9/8/Friday) |
【プロローグ】 「...もう忘れたの? 頭悪いッッ!!! だからさ〜...ほら、話してたじゃん???」 もう随分と前になるのかな? ボクの記憶が、かなり曖昧(あいまい)なせいで 詳しくは説明出来ないんだけど...。 「え〜嘘だぁ〜っ?!!」 「まぁ、別に良いんだけどさ? けど、アソコ...の...の奴... それ.........の...確かに...えるんだろうね。」 会話の大事な箇所が、途切れ途切れでしか 思い出せない。 それにボクは、歯痒さを少し感じて、舌打ちをする。 「じゃあ、...ん..調べてよ!!」 アレ??? そうだ、ボクと親しく喋るこの人の顔も 名前も思い出せない...。 どうしたんだろう? その日は、何かが何時(いつ)もと違っていた そう、何かが...。 ボクの名前は、『マサヤ』 所謂(いわゆる)会社員と言う奴をやっていて 1人で住むには、少し広いアパートに去年から住んでいる。 周りが殺風景なのが玉に瑕(きず)だが これも、まぁ仕方ないと思いながら 日がな一日を全(まっと)うし、静かに暮らしているのだ。 「がっ....?!!! ハァハァハァ.....どうすれば....――― ああぁぁぁぁ....うああああぁッッ!!!」 だが、こので単調と思えた平和な暮らしは――― 長くは続かなかった。 むしろ、何が日常の平和か?っと聞かれたら ボクには答え様もないの...だが、とにかく ソレは唐突(とうとつ)に今、牙を剥(む)こうとしていた。 時は――――― 2004年8月12日(木曜日) それが夢なのか、幻なのか? だが・しかし、此処からボクの奇跡は始まったのだ...。 【時報】 {ボ〜ンッッボ〜ンッッボ〜ンッッ♫} 何処(どこ)の階の何処の部屋にあるのか? ボクが知るよしも無いが――― 毎日の様に、ボクが引っ越して来てから 柱時計の時報が告げる、この単調で迷惑な音を 聴かされ続けている。 〓時は遡(さかのぼ)り半年以前よりも前〓 2003年12月中旬 「ふぁ〜、ヤッパリ 引っ越しって大変だね...今日は助かったよ、有り難う♪」 東京は12月でも雪が降る心配は殆(ほとん)ど しなくて済むから、冬でも楽だとか、何だとか 喋りながら、ボクは最後の荷物を部屋の中へと 運び入れて・手伝って貰った友達に玄関で 感謝の気持ちを現した。 「じゃあ、後平気?見られるとマズイモノもあるでしょうから 私達はこれで失礼するわね。 片付いたら教えてね、遊びに行くわ。」 余計なお世話だ!っと内心、思いつつ 鍵を閉め、荷解きを1人開始するボクの気分は 見た目の肉体の疲労とは打って変わり 高揚し、晴れ晴れとしていた。 {ボ〜ンッッ!ボ〜ンッ!!} 「これから一人暮らしかぁ.... 妙にテンション上がるなぁ〜!」 今、良く考えれば 当日からボクの部屋にソレは鳴り響いていたのだが 1日目は忙しくて、それ所か他に気をやる暇もなく その日は疲れて当然ごとく、熟睡してしまっていたのである。 〓時は舞い戻り...2004年〓 「そっか...どうりで静かだと思ってたんだよね。」 ボクが引っ越して来てから 数日しても、隣人と思わしき人物は まったく現れず、そう言えば 不動産屋に空き家だと言われていたのを すっかり忘れて休日を楽しんでいたボクは、 この突如(とつじょ)の騒音襲来に 少なからず苛つきを覚えていた。 『コンッコンッコンッ...。』 「あの〜、すいません〜〜〜ねぇ〜!」 暫(しばら)くすると、騒音は部屋の中へと 移り変わり、やがて ボクの部屋の扉がノックされたのだった。 『ガチャリ!』 ボクは、不機嫌ではあったものの グッと堪えて、社会人としての顔、つまり 笑顔で応待した、若干、頬は 引きつっていたかも知れないが。 「お〜、おったおった、あのね アンタんとこの外に出てる洗濯機あるでしょ? コレな、お隣さん今しがた引っ越された方。 この人らの、洗濯機が入らんのよ、通れないんだわ ―――だからね お宅んとこコレ、一旦・玄関に入れて 道、開けてもらえんかね???」 まくし立てるかのごとく 唾を飛ばしながら喋る、この爺さんが大家であり ボクとしては、進んでトラブルに 関りたくないし、起こしたくも無い。 「....えっ...えぇ 良いですよ...ボクがどかせば良いんですよね?」 これが、大人...と言うか社会人としての返事だと思った。 勿論、内心はとても腹立たしく 笑顔が更に引きつった事は言うまでもないだろうが。 「じゃあ、直ぐ御願いするよ。」 「....解りました〜。」 隣に越して来た一家の為に、何故この ボクが休日のほがらかで、優雅な時間を奪われてまで こんな作業をしなければ行けないのか? そう思い詰めると逆上して、切れそうになるので 努(つと)めてボクは考えないようにし この下らない、お手伝いを終えて洗濯機を 元の場所へと戻し、お礼の一言も無いのか、っと 横をチラリと睨む様に覗く、すると 来訪者の両親が大家と話しているのが見え これ以上の面倒は御免だと ため息混じりに呟いて、ボクは部屋に出戻った。 「疲れた.... ったく、汗もかいちゃったじゃないか...!」 ボヤキが自然と大きくなっていた。 一仕事のせいで、額から一筋の 汗の滴(しずく)が床下へこぼれ落ちると、ほぼ同時に {ボ〜ンッッ!ボ〜ンッ!!ボ〜ンッ!!!} このアパートの何処かの部屋にあると 思われる柱時計の時報が 鳴り響き、ボクの気分を更に不快にさせた。 「もう...これは我慢出来ないな... あいつも、外で話していた筈だし 聞いた筈...ッッ!!」 そう考えたのが先か、身体が動いたのが先か??? ともかく、ボクの我慢は限界を超えていたらしく 意志のまま歩き出し、気付けば 大手を振って、この場を去らんとしていた――― 「なっ!?...どっッどうしたんですか?!!」 大家を呼び止めて 奴の目の前に立ち塞がっていたのだった。 【白い影】 「用件が...お話しがあるから、呼び止めたデスが?」 ボクの目が少し、据わっていたのも あってか、猛暑、蝉の声が響き渡る 通路で大家は狼狽(うろた)えたように口を開く。 「はっ、はい...何でしょうか???」 「引っ越してきてからナンですがね。 部屋に柱時計の時報が、ず〜〜〜っと 鳴っていて、今もなってらしたでしょう? コレ・非常に迷惑なんですがね???」 呆(ほう)けた様な顔をした後に 一瞬、大家が顔をしかめる。 「...あの恐縮なんですがねぇ... 私には何の事だかサッパリ....。 今まで入られた方々も、そう言った苦情は 出されていないので...それでは、失礼しますよ。」 その顔は、まるで無機質であり ボクの言葉などは、まるで信じておらず 何処か冷めた目付きで、こう言い放ち 有無を言わせず、歩き進んで行ってしまった。 「まるで...ボクが頭が可笑しくなったみたいな 顔しやがって....。」 ボソリっと呟いて、ボクはすごすごと 部屋へと戻って行くしか無かった...。 その日から、数日が過ぎた・ある夜――――― 何時ものようにエアコンの運転を除湿に切り替え 温度もあまり下げずに寝床へ就き 早めの就寝を迎えていた。 「...クォ〜...クォ〜ッッ...!!」 モノの数分で眠りについたボクの意識は 脳の見る夢の世界へと引きずり込まれて行く。 …だが、それは突然訪れたのだ… 「....ッッ!?(誰..か...居る...。)」 ボクの就寝に使っている 本棚とパソコンのある部屋には ベランダへと通ずる大窓は無い、そして このクーラーの効いてる時に 窓を開け放っておくほど、ボクも馬鹿ではない...。 だが、隣の部屋・居間として使用している その部屋の大窓に引っ掛けている 白地のカーテンが月夜に揺らめくのが 眼鏡を掛けていない状態のボクでも何故か ハッキリと見えてしまった...。 「あ゛っっ...あっ....!!」 声にならない声しか出ない 意識した事で不意(ふい)に訪れる恐怖と焦りが全身に ジメッとした汗を這い寄らせて行く。 「ハァハァハァ....。」 泥棒であるなら命が危ないかもしれない、がしかし ボクの予想は大きく外れている事に 次の瞬間...気付いてしまう、何故なら その搖れていたモノが、ゆっくりと静かに だけど確実に、ボクに迫って来る ソノ姿が見えたから...。
悲鳴を上げたい、泣き叫ぶほど あげてしまいたい、しかし 本当にヒトが恐怖した時は ヒトは身動きも出来ず 声も出せぬものなのだとボクは この時、初めて知った。 「.....―――るなぁああああああああああ!!!」 ボクの掠(かす)れた叫び声と同時に {ボ〜ンッッ!!!ボ〜ッッンッッ!!!} 何時もの時報が鳴り響く、深く目蓋(まぶた)を 閉じていた、この目を開けて 眼鏡を装着し辺りを見回すが... あの白い影は見えなくなっていた。 「はぁ...ハァハァ... 夢...か....???」 そうであって欲しいと、思った言葉が 思わず口に出ていた。 台所へと向かい、コップを取って 勢い良く注ぐ水道水をくみ上げ、一気に飲み干すと 今の出来事が消して夢でない事を 物語るように脳が刻みつけた鮮明な映像を ボクは思い浮かべていた、あの白い少女の影を―――。 【視(⇔刺)線】 心霊現象と呼ぶのが相応しいのだろうか? ソレが起きた事を誰に相談し、喋る事も出来ず ボクは初めて、こう言った現象を 語れば自分の心証を悪くしてしまう為 現代の日本では、気軽に見えざるモノの 話しをする事が出来ないのだと、身に感じていた。 「お疲れ様で〜す。 今日はもう上がって貰って結構ですよぉ〜? ちょっと早い時間ですが、また御願いしますね〜。」 その店のフロアマスターから言われ ボクは早々に切り上げ、この店を 後にする事にした。 「お疲れ様で〜す。」 着替えを終えて、帰路へとついたボクは どうしても忘れられぬ、あの出来事を思い返していた。 {次は〜***〜***〜ッッ} 同時に、誰か・から聞いたこんな話しも 思い出し、ボクは少し身震いしながら 乗り換えの駅で、電車を一旦降りるのであった。 「あぁ、そっか... んじゃ、教えといてあげるかな? たった1度でも、強い霊体験するとね――――― そこから“霊視”の力が付いちゃうんだよね♪」 ボクは心霊や恐怖モノが、嫌いと言うワケではない むしろ、好んでいる方だと思う、しかし 実際に自分が体験するのが これ程、壮絶な脅威を感じるとは思いもよらなかった...。 「余裕もあるし...お弁当でも買っていくかな?」 などと、呟き・自転車のペダルへと足をかけて 最寄の駅から自宅付近のスーパーに 直進して行った。 「あっ!(ボクの書いた要望署名が効いたな!)」 欲しい商品の要望書へと書き込んでおいたのが 功をそうし、入荷されていたらしい 商品を手にし、会計を終えるとボクは ホクホクとした笑みを浮かべて自転車を、駐輪所として 扱っている空きスペースへ止め、2階の 自室に歩(ほ)を進めた。 「カギ・鍵〜♪」 アパートの鍵を腰のポケットから取り出しながら 手荷物を持ち、歩きつつ 隣接する向かいの白塗りの一軒家の 少し穴の開いた障子が常に閉まっている窓へと 何とはなしに、目をやり・鍵を使用し、開け放つ為に ドアノブへ手を伸ばさんとした――― 〓忘れもしない、その瞬間だった〓
視線、まるで刺すようなソレがボクの 背中を突き刺し、貫いたのだった...。 「う゛ッッっっ?!!!」 ブワっと吹き上がり、滲む冷や汗が あの時の恐怖を浮かび上がらせるが、辛うじて 身体は動くようだ...。 素早く、身体を捻り視線の感じた場所を凝視するが そこには、穴が開いた障子とガラス戸で 締め切られた窓が存在するのみであった。 「...何なんだよ....。」 今の出来事を忘れ様と呟きながらも、ボクは いつも気にかけない、この障子の穴が まるで悲痛を叫ぶ、人の顔の形の様に見えてしまい ゾクリと背筋に寒気を感じて 滑り込むかのごとく、既に鍵の開錠してある 扉を開いて、素早く室内へと身を隠すのであった。 「はぁはぁはぁ...はぁはぁ...早く シャワーでも浴びないと...ん?」 ボクが部屋へ逃げ込み、汗を流さんと 脱衣場へと向かうと、お隣から内容は解からないが 複数名の声が聞こえ、扉の開くギィッと言う音が 壁が薄い、この浴室に響き渡っていたのである...。 【黒い影】 「だから、私が尋ねてくるから キミは子供達を頼むよ?」 悪いとは思ったが興味心を隠せず 今の出来事から心を逃がしたい気持ちもあって 小さい・だが、格子(こうし)が備え付けられた 窓を静かに開けて、シャワーの水の出を ボクは緩(ゆる)めた。 「ぱぱぁ〜何処行くのぉ〜???」 「ママ〜、パパお外行くの?僕も行きたいッッ!」 男女の幼児と、その行く手を阻むように 母親が姿を現し、父親が行き去るまで この子供達へと言い聞かせていた。 「ほら、ボ〜ン・ボ〜ンって鳴るでしょ? 時計さんのね、お腹の音を止めて貰うように 管理人さんにパパは、御願いしに行ったのよ。 だから、ね?良い子だからママと一緒に――― お部屋にいましょうね〜!」 どうやら、向こうの家族も 出所が不明な柱時計の時報に悩まされているらしい。 「.....てことは... 2階じゃないのか...あの音...。」 ソレを大家へと訴えるつもりなのだ。 ボクは手間が省(はぶ)けたと思う反面 アノ数日前の深夜の出来事を思い出し 背筋を凍らせ、早々に浴室から出て行くのだった。 そう言えば、隣にいるものの 時間も合わず、ボクは今日初めて 4人全員を見た事になるのだ。 「へぇ...そんな苦情...あぁ... でも...オタクらだけなんですがねぇ...。」 数十分もすると、ガタガタと階段を登る 足音と、聞き覚えのある 老人独得の間を持つ喋り方が聞こえ ボクは、玄関脇へと備え付けられた 台所の上方にある、小窓をそっと開け放つ。 「ともかく、お隣さんかも知れませんが? 私達は、迷惑しているんです! それに日増しに音が大きくなっているんですよ?!」 会話がボクの耳にもどうにか届く。 「あぁ、思い出した..けどねぇ... お隣さんからも同じ様な苦情が来ていたけどねぇ...。 このアパートに柱時計を使っている方は いらっしゃらないんですよねぇ...。」 大家の曖昧で人を喰った様な言い回しに お隣さんは声を荒げて行く、ボクはその樣子を 何処か他人事の様に見守っていたが、暫(しばら)くして コレは自分にも関わる事だと思い出し 意を決し扉を開けて、声を掛けた。 「ですから、主人も私も聞いていますし 子供達も.... お隣からも苦情が出ていたんでしょう?!」 『がちゃっっ――ッッ!!』 「お話し中にすいませんが、気になるお話しだったので 声を掛けさせて頂きました。 こんにちわ、ボクの方の苦情――― やっぱり、勘違いじゃなかったんですね?」 ボクの突然の訪れに誰もが声を失っていた為 自らが自己紹介し、概(おおむ)ねを 身振り・手振りを混じえ伝えて行く。 「わっ....わかっかりました... へぇへぇ....でも、暫く時間を下さいませんか...ねぇ? 不動産屋さんを通さないとも... いけませんのでね」 バツが悪そうに、足早にボクらの前から 逃げ出した大家の狼狽えぶりから 何かがある、ソレだけはハッキリと 理解する事が出来た...。 〓そう...何かが...〓 「私共(わたくしども)は、神明(しんめい)と申します。 以後よろしく御願い致します。 都会だからと言ってお隣様にまで挨拶をしていないのは 失礼でした、こちらは妻の鹿波(かなみ) そして、子供達の麻友梨(まゆり)と真紀(しんき)です。」 皮肉な事に、これをきにして ボクらは当然であった、お隣さんの顔と名前を覚え 挨拶を交わし・接触を持つ機会を得たのである。 「では、お互い“音”の事で何か解ったら... それと奇妙な出来...いぇ、何でもありません...。 ともかく、少しでも発見があれば頻繁に 連絡を取り合いましょう、それでは失礼しますね。」 彼らは話し合いを終えると、互いの号室へと 出戻って行く、謎を追うと言う意味合いも兼ていた為 彼は少し興奮気味ではあったが 午前0時には床に就く、しかし床へと就いた頃―――
監視するかのごとく往復を繰り返す黒い影が 1つ―――――――...。 【神隠し】 {Do you wanna die tonight?} «あなたは今夜、死にたいですか?» 飛び上がるようにして目が覚めると 「うあぁッッッッ?!!!!」 まだ、時計の針は深夜を指していた。 「はぁはぁはぁ.... “スクリーム”何て夜に見たから?その影響???」 急に明日の...いや、もう今日か...。 今日の仕事がキャンセルとなった為に この日、8月17日の火曜日は休みになった。 「....汗が酷い... 1度シャワーでも浴びちゃおっかな。」 当然、この休日を無駄にする手は無いと 思い、ボクは昼間にでも 近場の図書館で、このアパート・更に近辺であった 事件や、大家と不動産屋、どちらも 情報収集と題して、調べ聞き探ってやろうと 考えていたのだ。 『ピンポ〜ンッッ!!!』 呼び出し音が鳴り響き、ボクの名前が 図書館のカウンターで呼ばれた。 「この近辺の未解決事件でしたね? 1件だけ、ご指定の場所で ソレを取り扱った当時の新聞を発見しました。 当時は――――― 平成2年...1989年8月30日の... コレです、“謎・幼女失踪〜神隠し?〜” ――の見出しですね。 地域新聞でしか掲載されていなかったみたいですが...。」 そこまで係員が説明するのを待って 後は自分で調べるから、っと釘を刺し 図書館内の個室を借りて、その場を去り 事件と“音”の何らかの関連性を見付けるべく 所謂(いわゆる)探偵が良く行(おこな)うであろう 調査を開始した...。 〓1989年8月21日・月曜日〓 この日、自宅であるアパート住まいの 3人家族“瓶成(カメナシ)家”の長女 “瓶成 由嘉里(ゆかり)”ちゃん 当時10歳の行方が夕刻から不明であり 翌日22日の午前1時に、警察へと通報が入った。 錯乱する母親に代わり、父親が 経緯を説明、知り合いの友達の家々にも連絡を入れるも 1人途方に暮れていた所、父親が続き 親戚類を辺り、それでも午前0時を過ぎて 妻をなだめた後の連絡であったと言う。 少女は所謂、鍵っ子で両親は共働きであった為 良く近隣(本当に目と鼻の先)の小学校から 帰宅した後は、荷物を置いて再び友達の待つ 学校の校舎へと遊びに良く出ていた事等が伝えられた。 (当日は夏休みではあったが、プール講習期間の為 小学校自体は開校し、授業もあった事を追記する。) 良く帰宅が遅くなる事の理由から母親が 何等危惧していなかったのが、容易に伺える。 更に警察が調査を進めるも、発見されるのは 現場である自室に放置された、赤いランドセルと プール用具の一式のみで 靴も消失している所から外部犯行の線を追うが その日の放課後(厳密には昼過ぎ)、彼女と誰も面会し 遊んでいない事から、自室にて行方をくらました 以外は考えられないっと、行き着き“謎”を残しつつも 近隣の聞き込みや、走査も続くが結局は “失踪”っと片付けられ、事件はあえなく 未解決のままに、その幕を閉じたのである。 「人々はこれを噂し...“神隠し”っと 呼び...彼女の両親はいたたまれず 数年後、その場所を引っ越した....か....。 (今から15年前の事件...。)」 ゆっくりと、その記事を新聞紙の束から取り出し コピーをしたボクは、この証拠を片手に 大家をまず問い詰めることにした。 時刻は、もう15時...“音”との関連性は 解らなかったものの、事件現場であるアパートの名前で 決定的な確信に至った・あの深夜にボクの部屋を 訪れたのは...彼女である、っと...。 「どう言う事なんですか? ハッキリ説明して貰えますか??? と言うか、義務がありますよね。 証拠もしっかりあるし、言い逃れ・出来ませんから。」 確かに強い口調ではあったものの ソレを抜きにしても この証拠を前に、大家も観念したらしく お茶を運んで来た奧さんである、老婆を 下がらせ、ボクを受け付け横の 安い皮の黒いソファーへと座るように促(うなが)した。 「...あぁ、別に隠しとった わけじゃないんですよ...。 それに、不動産屋さんには私らの方から 伝えてなかっただけで―――」 「ボクは、そんな弁解を聞きに 来てるワケじゃないんですけど? 本題です、本当であるなら“音”の事も 貴方・解ってますよね?」 ボクは彼の狼狽(うろた)えを無視し 続けて、そこから真実を聞き出すことに成功したのだった。 「へっ..へぇへぇ...アンタらを 騙すつもりはなかったし、殺人でないので... そこだけは解ってくださいよ?... 事件があったんわ...あんたの隣、つまり 2号室なんですわ....。」 「えぇ、解ってます...。 で、あったんですね?」 …その頃、アパートでは… 【諱(い)みじく過去】 {ぼぉ〜っっん!ぼ〜〜〜っっんッッ!!!!} 「日増しに大きくなっているな... お隣さん...彼と隣接している部屋... 俺達の寝室が一番響いているようだ...。」 父親が室内で呟く。 「えぇ、起きたわね...。 けど貴方...だからこそ...なのかしら... 記載していて、私も解かった事があったわ...。」 彼は、わざわざ有給休暇を使用し 今週と来週末までを休みとしたのだ。 「パパ〜、今日からパパ達も夏休み?」 「ママもお休み???」 2人の子供を適当にあやしながら 母親は、少しの間だけ 兄妹で遊んでいてね、っと笑みを見せ 彼らもそれを、疑いもせず頷(うなず)き従った。 「俺達の代わりに――― 調べて貰っているんだものな...。 これ位は、お安い御用だ...。」 「えぇ、で・結果だけど―――――」 前日の話し合いで、子供達を持つ 家族は家での、とある役割を『マサヤ』は指示していた。 その内容は、自分が外回りに出ている間に “音”のカウントを深夜から任せると言うものであった。 「8時間に8回... 次に2時間に2回....最後に1時間に1回 ...これを繰り返しているわ。」 交代交代で、別れてから書かれたノートのメモには ソレの鳴り始めた時刻と回数が克明に記帳されていた。 「どう言う事なんだい?」 起きたばかりで頭の回らぬ彼は 静かに返答を待った。 「これね...毎時間ごと...なのよ...。 つまりね...あとこれから、3時間後に 8回柱時計の鐘の音が...絶対に響くの...。」 何か、これ以上の首を突っ込み・知れば 取り返しのつかない事になる、何故か 彼はそう思いながらも、真実を求めずには 此処まで来て、いられなかった...。 「あぁ...ありました.... あったともぉ... あのお嬢ちゃん...漸く、時計の針を読める様に なって...ううっ.....。」 「柱時計は... それで????」 今やボクのテンションは止(とど)まる所を知らず 走り出した機関車のごとく 高ぶり、考えるよりも先に口が出てしまう。 「あぁあぁ...あの柱時計は... あぁ...そうだ...瓶成さん達が...引っ越した際に――― そうじゃよッッ!!!!! する筈なんぞ、ないんだっっ!!! あの時計は、捨てたんだッッ!!!!!!」 突然、ガタリっとテーブルを 搖るがしながら立ち上がった老人にボクは 少し不意を突かれたが、慌てずに彼を見据えた。 「“柱時計は捨てた”...確かですね?」 頷いて答える、大家から これ以上の事実は聞けないだろう いや知っていたとしても、この錯乱状態の様な 様子では...ともかく、今得た情報を携(たずさ)え ボクは、自転車のペダルへと足を乗せた。 「お爺さんッッ?!!」 「そんな“音”する筈がないんじゃ... なぁ...解かるじゃろ?!! あっちゃならんのじゃよぉおおっっッッ!!」 彼は自転車を何時もの駐輪場代わりとする 場所へと押し上げると、資料を片手に このまま、お隣の扉をノックした。 「お待ちしていましたわ...。」 すると、目の下にクマを作った彼女が 姿を現し、旦那は現在・子供のお守りを していると説明、扉を出て外で 彼らは会話を始めた。 「これが、その資料です...。 そちらの部屋で失踪事件がありました...。 その詳細をボクなりに纏(まと)めたモノです... それから―――」 「大丈夫です、夫と私で十分ですから この資料だけで、本当に助かります!」 マサヤが言い終える前に 彼女はニコリと笑って、手渡されたそれを 大事そうに抱え一礼し、号室へと そそくさと戻って行った。 彼が室内へと戻った...その瞬間だった...。 {ボーーッッンッッ!!
一際(ひときわ)大きく柱時計からの |
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【エピローグ】 踏み込んで来た警官隊から 何故か、ボクは確保され 心外にも現行犯として捕らわれてしまう。
しかし自身の猛烈な抗議と、子供達の証言 現行の犯人が存在する事で ボクは保釈され、事なきを得た...。 「いんやぁ...神明さん夫妻が電話を 掛けて来た時は... 一時期はどうなる事かと 思いましたよぉ...無傷でよかったですナァ、ははは!」 そう...ボクはあれ程 切り刻まれていた筈なのに無傷だった。 それが、逮捕手前に繋がったのかも 知れないが、今では良く解からずにいる。 「おぃ!!見付かったぞッ!!!!」 夕闇が訪れんとしていた、矢先に ボクの部屋と神明家を隔(へだ)てていた 壁の中のより瓶成家の少女の白骨死体が 掘り出された、15年後の8月21日...漸く 彼女は、あの狭い壁の中より解放されたのだ。 その後、ドタバタと騒ぎはあったものの マスメディアもそれなりの 日数が過ぎたのちに姿を消した。 「ふぁ〜〜〜!!! ...よし...行くか...!」 ボクはまた、あの単調で、だが 平和な生活を手にした...筈だった...。 「最近有名なネットゲー先輩は PCあんのにしてないんデスよね? あっ、それより先輩聞いて下さいよ! ここのねデパートの...薬品売り場の2階で...」 「ウチのは旧式だから...て、なにぃ?幽霊??? そんなの気にしなきゃ平気だって!」 ボクはこの時、ふと誰かが昔教えてくれた とある事を再び思い出した。 “1度でも、強い霊体験すると そこから“霊視”の力が付いてしまう” っと言うソレを...背後に何らかの気配を感じながら。 【後書き】 ・2年前の構想をちょっと変化させて 書き換えてみました。 様は、その時からのリメイクになるわけですが まっ、大本は今回の物とは 変わらないです、四肢と首チョンパが なくなった程度で(笑) 主人公は殆(ほとん)ど、容姿も イラストで、と言う事にしました。 今回に限り、何ですけどね(^〜^) 取り敢えずは矛盾点はあるものの、終われて 良かったッスかね? ・柱時計の謎を紐解いて行く辺りから 作者が飽きてまして こればかりは、テンション上がらないなぁ〜っと 思っていたら、非現実的になり始めた辺りと 韻を踏まなくなった辺りで 煩(わずら)わしさから解放されて かなり自由に書けて楽しかったです(爆) そもそもの、束縛が 何だか文章のつまらなさを産んでいたわけですから 見直しも途中から止めて、完成してからに 移行しました、よって手直し してない現在はまともに読めたものではないでしょう。 多分...( ̄〜 ̄;) ・さて、本編内容ですが 大学編と言うか、別途のH・Pを 知らないと繋がらない仕掛けが満載です。 まっ、知らなくてもクラスフィの方の 終わりを見れば、同じ様な 終わり方なので解かると思います。 けど、その辺は、ここでは どうでも良いので割愛します、がね? 兎にも角にも、タイトルの通り たった1回ッきりの奇跡です、それが 後にどんな事を及(およ)ぼすのかは 解かりませんが、主人公のみぞ知る、で おぃらは丁度良いと思っております。 それでは、長らくお付き合い下さいまして 有り難う御座いました、これにて “ボクの奇跡”は終わります、また次回を 宜しかったら、お楽しみにして下さいませ。 【Fin since,2006/9/8/Friday】 |