相手になってみないとね?


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〓…今度はワタシの番…。〓




糸電話
(2005/2/20/Sunday)




・その日、通夜の前日―――
「この度はご愁傷様でした…。」
彼女の彼氏は、電話を受けていた。
「うううっ………
』っさとるぅう!!!」
泣き叫ぶ彼女は
ゆっくりとまるでスローモーションの様に
思考を巡らせて思い出していた。
あの日の事を―――――
「じいちゃん死んじゃった」
「…随分と、おじい様と
仲が貴方は良かったものね…。」
彼の、悟の悲しみを
一身に受けようとする彼女・『明菜』。
「メイナ…明菜、明菜は優しいなぁ……。」
彼女の寛大さに心を打たれて
思い出される数々の祖父と彼との懐かしき日々。
「………ワタシには、それしか…
出来ないから……。」

・やがて悲しみと言う名の焦燥から
落ち着きを取り戻した彼が
彼女へと声を掛けた。
「なぁ…昨日さ……
じいちゃんから電話があったんだ…。
この携帯に、な?」
携帯電話をちらつかせながら彼は続けた。
「うん…それで?」
「…でね。
じいちゃん・何も言わずに
電話に出た僕に挨拶も無しに
無言のまま通話を切ったんだ…」
それだけ言い残し、彼は
親戚一同の集まる大広間へと向かって行った。
「……何か知りませんか???」
それが、明菜が行った悟との最後の会話だった。
その後、彼の葬儀の途中で
彼女は妙な噂を耳にする。
「電話………。
あったんだよ、前の日にさ…」
彼が死ぬ前の日
つまり昨晩・彼の幼馴染の親友へと
携帯電話から連絡があったと言うのだ。
「…悟……から?」
「あぁ………けど・無言電話だったんだ…。」

・「…無言電話?」
無言電話、っと言う単語が
彼女を不安へ誘った。
「まぁ、あいつの事は―――
忘れて…今日は、楽しくやろうや!!」
…翌日…
プルルルルッッ!!プルルルッッ!!!!
「…はい……。」
「―――――………――ッッっ…―。」
昨晩、酔い潰れた彼女が
ベットから少し離れた
ソファーの上でけたたましく
鳴り響く携帯電話の呼び出し音で目を覚まし
けだるそうに立ち上がり
通話ボタンを押す、すると
プーップーップーッッ!!!!
通話口の向こうからノイズ混じりの
無声音が、そして通話は即座に途切れ
やがて無機質なブザー音が、彼女の三半規管へと
注ぎ込まれて行った。
「…………。」
彼の祖父から彼は無言電話を受けた次の日に死んだ。
彼女はゆっくりと立ち上がり
携帯電話を握り締めながら
と、ある確信に満ちた表情で電話を掛けた。
「………。
はぃ…『瀬々木』の……母です―――」
そう勿論、その相手は決まっている―――
「ワタクシ…迷井と申しますが……」
彼の親友の携帯電話へ、死亡を確認する為に。
「…わたしは……。
一体誰に・この電話を掛けるのかしら?」

ふと、そう彼女は呟き通話を切った…。

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