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〓…その日、最愛のあの人が死んだ…。〓




絶する世界
(2004/4/2/Friday)




夫が...いや、あの人が
事故死してから
「脳内パルス...一致しています
被験者の準備も完了しました。」
まだ、結婚してから数日しか
過ぎていない
それなのに、何だったのだろうか?
あの喪失感は...
「では先ほども説明しましたが
順を追って再び説明させて頂きます。」
まるで長い間、生活を共に
してきたかの様な、そんな
数日間だった。

「えぇ、肉体は死んでも
脳と言うデータは生き残っていますから」
彼が死んでから呆然自失状態だった
その私と私の精神を救ったのは
現代の最先端精神医学治療技術だった
「それで...私は
...主人の....彼の記憶を?」
「えぇ、奥様...。
辿れます、旦那様の辿った軌跡を」
私の落胆ぶりを見て
不敏に思った彼の友人からの薦めで
最初は、気が紛れる程度で
済めば良いと思っていた...
「彼の記憶...。」
「奥様が旦那様の脳へと一時的に
乗り移るわけです...。
人間とは微弱な電気を発し生きています
我々はそれを魂の鼓動と
呼んでおりますが...。
死んだ人間には血脈の様に流れていた
ソレが排斥され心臓も動きを止めるのです。」
だが、その課程を聞いている内に
私はとある疑問へとぶつかり
興味を持ったのだ、彼しか知らない
彼の脳の中の世界で私は
どう映っているのか?っと...。

幸い彼の脳は無傷であった為
難なく機材を取り付けられ
傷ついた身体は培養液へと
漬けられ治癒されていた、その際
色々と許可が必要だったが
彼の友人が大きなコネクションを
持っていた事もあって苦労せず
済ませる事が出来たのだった
「一時的に奥様の身体は仮死状態となります
そこから我々が全力で
肉体をサポート致しますが
危険だと判断した場合、強制的に
旦那様の肉体より奥様を呼び戻します。」
そして、いよいよ
私と彼が繋がる日が訪れた
「解りました...。
こうして横に眠る主人を見ていると
死んでいるなんて嘘の様...」
「ですが離れてしまった魂を
定着させるのは現代医学を持ってしても
無し得ていません...さぁ、始めましょう!」
実験機材は私がこれまで
見た事もないような器具ばかりで
肌へと触れる
鉄の冷たさが高鳴る鼓動を
更に早めて行った...
「では、脊髄からのコネクト反応
...電離係数を.....平衡値...
安定...電離交換開始。」
横で彼の抜け殻と寝かされた私は
ヘルメットの様な物を被らされ
全身にパルス測定器と言う機材を
取り付けらると、首筋へと注射を打たれた。

眠るようにして
私から意識が離れた瞬間だった
「実験成功です
脳波安定しています...被験者側へ
人工電気信号発生させました。」
走馬灯のごとく
彼の記憶や、経験が私の中へと
雪崩の様に入り込み
これまでの彼と言う人間の生が
ゆっくり私へ広がらんとしていた...だが
「おい?!
どうした....血圧値が異常に
膨れ上がりすぎだ!!!!」
「ノルアドレナリン投与を止め...
先生!...パルスが...!!」
その時だった、私は
彼となって彼の記憶を体験して行く内
妙な異変に気付いたのだ
やがて私と出会う記憶へと
辿り着いた矢先の出来事だった
「バイタル....くそっ!?!
なんだってんだ?!一体!!」
そこには振り返れば
私が居る筈だった...正確には
「いっ...いやあぁぁぁぁっっっ!!!!」
何時も鏡で見ていた私が、しかし
それは違っていた...
「あっ...暴れないで!!
今、直ぐに元の身体に戻しますから!」
「糞!!抑え付けて
精神安定剤を投与しろ!早く!!!」
私は彼の中であげた私の奇声で
眼を覚まし、周囲を見渡すと
嘔吐して気絶した
「あっ...あぁぁっ....
何...誰よ....ひっひぃいっっ
ウヴォげっ?!!」
びちゃっっ...びちゃちゃちゃちゃ!!!!
それが彼の中の私の最初で最後の光景だった。

「信じられん....
こんな事は初めてだ....。」
「お気の毒ですが....
精神的に彼女は耐えられなかったのとしか
思えません...今までそんな患者さん
いませんでしたし」
気付いた時、私は
病院のベットの上で寝かされてた
その姿を鏡へ映す、が
「お目覚めになられましたかぁ〜?
良かった!すぐに先生を
お呼びしますね!!」
そこには私が居るだけだった
「私は........。」
だが、私はまだ覚えている
あの想像を絶する世界を
「良かった、けれどもう安心ですよ。」
彼の瞳には、私やヒトが本当に
あぁ、見えていたのだろうか?
「...先生?」
「はい?どうされましたか??」
「私、主人を忘れる事が出来そうです。」
もう確認する事は出来ないが
ただ、これだけは確かだと思う
他人が見ているモノは他人しか
理解出来ないのだ、っと...。

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