[第7話]『放たれし憎悪』 |
…殺してやる...そうだ...オレは... あの時、産まれたんだ...この剣も... 世界の覇者だと!?...ふざけるなよ... これは、オレの憎悪自身だ...あの扉を 開け放った自分がまだ認められずにいた なんて...まだ...その感傷等と言うものに 追われていたのか...フッ...くくっ... 『ファング・オブ・キング』...貴様は、 あの時のボクが殺してやる...みんなの 憎悪の炎で...その身体ズタズタに 引き裂いてやる!!... さぁ、もう起き上がろう...オレには、闘いが 待っている…。 ・ファング・オブ・キング...ライオンの 獣人『ケイ』の専属の奴隷... 『シロの奴隷』となった 『将』と『愛』は、 『ファング・オブ・クィーン』と呼ばれている ケイの妹『シン』の手によって 離ればなれにされてしまった...。 しかも、兄の心を奪った将が許せなかった 彼女の体罰とケイの屈折した愛情を毎日 受け続けながら将は、それに必死に 耐えて、生き続けた...。 そして、ある転機が訪れる...それは、 この生活が『6年目』を過ぎようとし、 将が16歳になった時である...運命の 歯車が今、刻一刻と動き出す...。 ・移動要塞内部でこの6年愛の 姿をちらりとも見ていない... だが、何処かで生きている...そんな はかない支えが今日の将の生きる糧 だった...生きていれば... 生きてさえいれば...そんな想いが将に 6年間の地獄を乗り越えさせたのだ...。 「ちぃっ...また死んでやがるぜ...ははっ。」 「シロの奴隷で...シン様の専属奴隷かよ... イイご身分だよなぁ?」 当時シロの奴隷仲間達の、弱い者は すぐに生き絶え 生き残った者達も精神をケイに蝕まれ お気に入りとされている将を 妬み嫉妬すると陰で暴行を加えていた...。 「ふっ...惨めな...将とか 言ったな?....この『ミゼル』が 楽にしてあげようか?」 傷つき床に倒れこんでいた将を 真上から見下すと、その獣人は、 手にしていた槍を将の頭部に突き 立てようとした...が、その瞬間 何者かの手によってそれは、阻まれた 「止めないか...『四神獣』の 一人とあろう者が弱き者に手を 下すなど!!」 「...ふんっ!その手を離せ!!」 捕まれていた手を振りほどくと その槍を構えた将と同い年位の獣人は 更に止めに入った獣人に 「....ファング様に気に入られている くらいでイイ気になるなよ... 『イザゼル』!!...お前とて こいつらと大差ないんだからな...。」 そう呟き、その場を後にした.... 「大丈夫???」 その獣人は、気絶している将を 抱えると部屋に運びベットに寝かせた...。 ・「....。」 その獣人が部屋から出ると そこには、シンが立っていた 「私の奴隷を運んでくれてどうも イザゼル...でもね...金輪際 あんた...私の部屋に入らないでちょうだい... それから将にも触れないで...ねっ?」 脅しかけるようにそう言う シンに向かい 「解りました、クィーン。」 皮肉を込めて言うと、その獣人は、その場を 離れようとする、が... 「あっそうそう...お兄様が四人共 呼んでいらしたわ...貴方も早く 行きなさい...確か...まぁイイわ 行きなさい...お兄様の力になりにね...。」 引き留められ、伝令を伝えられた。 ・『ぺりっぺりぺりっ...。』 「....うグぎゃッッ!?」 将が突然の両手の痛みで 目を覚ますと目の前にはシンが 笑いながら、将の眠るベットの上に さっき寝ている間に剥した血の滴る 両手の爪を並べて見せた。 「どう...いつも以上に綺麗に 取れたでしょ?...うふふっ アラ...どうしたの?涙が流れているわよ? フフッ....さぁって...と、お兄様は、 今日は、お出かけになられたの... だから今日は私が一日中貴方の お相手をしてあげるわね...嬉しいでしょ?」 シンの残酷な笑みが将を貫く... 「...あの...そろそろ愛に会わせて 欲しいんですけど...。」 だが、それに耐えた将は、目にいっぱいの 涙を溜ながら徐にシンに向かい そう呟く...すると 「あぁ〜...そうねぇ〜...もう何年も 会ってないんですもんねぇ...ふふっ... お兄様も、もう出てしまわれた頃でしょう から...ふふっ良いわ...会わせてあげる...。」 不気味な笑顔を見せてそう 答えたシンは、将の首輪に付いた鎖を 手にすると、四つん這いで歩かせ ...ある部屋まで連れて行った...。 「...彼女...この先に居るわよ... 見てきなさいよ...あははっ... そうそう、それから その首輪...もう取ってあげるわ...。」 シンに言われて首輪を解かれた 将は、立ち上がり部屋の奥に進んでゆく... すると、そこにあった 大きな金属せいの扉の前で 立ち止まった...この先に...愛がいるんだ! そして、期待に胸を膨らませた将がその扉に 手を掛け開け放った...!! ・「あらぁ〜ん?驚いた?将君?... ふふ彼女ねぇ〜私が無理して 遊んだら...壊れちゃって... ふふっ...可愛いかったし... もったいないから『3年間』... その大きな瓶に漬けておいたのよ... くすっ...所謂ホルマリンずけって奴ね。」 将の目の前に...先に進む部屋は、 存在しなかった...そこにあったのは 大きな透明なケースに入れられ その中の液体に裸で飾られ浮いていた 愛の無惨な姿だった.....そして、それを 見て驚愕し、声にならない言葉を 叫び続ける将の横からシンは、優しく 耳元でそう呟き...自分が自らの 玩具にして殺したと言う事実を ただ涙を流して、その場に立ち尽くす将に こっそり教えた... 「...愛...。」 まともに喋れた言葉さえも掠れる 将は、その液体の詰まった愛の浮かぶ ケースに手を当てがった... 「いつみても可愛いわぁ〜 永遠の美しさよねぇ〜 ...ふふっ...感謝してほしいわよ。」 支えとなっていた人間が実は、数年も 前に殺されていた...そして、その 身体さえも侮辱し、あざ笑う シンを見て将の中で遂に何かが弾けた... 『どくん...どくん...どくん!!』 胸の鼓動が高鳴り全身に熱を 帯びる...感覚が異常に冴え渡ると 共にさっき悪戯に爪を剥された 両手の指先が異様な音を立て始めた!! 『ビキィ!!ビキキッ!!!』 「ウォォォォッッッッ!!!!」 突如自分に向かい絶叫する将を見てまた バカ笑いを続けるシンは、唐突に 「...ふふっ...あんたには、もう用は ないのよ...今日限りで消えて貰うわ... 6年間無駄な努力ご苦労様でした...クスッ ...さようなら...最愛の お兄様の心を奪った...サル共がぁ!!」 そう言い放つと、素早く手にしていた 剣で将を斬り殺そうとした...その瞬間!! 『ジュパパパッッン!!!!』 「あひぃい!?」 シンの両腕が吹き飛び空を舞った!! ・「.......。」 床に落ちた自分の両腕を見て 傷口から鮮血を巻き散らし、その場に 崩れ落ちたたシンは、呻き声を 上げながら、将の両手に鋭く 伸びた爪を垣間見る... 「ひぃ..いやぁごっ御免なさい!! ひぃ...わっわたしぃがぁあ... ひひぃぃ殺さないで!!!」 だらしなく涙を流し 失禁しながら許しを請う....が... 「...お前が許しを得るのは... ボクじゃない...お前達に殺された 愛にだッッ!!」 そう言い放った将は、左腕を軽く 振り上げると....それを勢い良く シンに向かい下げて...その身体を 『ザギュゥォォォッッッン!!!』 「あっくぎゃぎゃっっ!?!?!」 突如、出現した両爪で 真二つに両断する!!! 艦内にシンの断末魔の叫びが響く... それを聴いた艦内のケイの選び抜かれた 腕を持つ部下の獣人達がシンを殺した 将の下に集まって来るだろう... だが彼は、そこから逃げもせずに 艦内にいた全ての獣人達を皆殺しにして ゆく....この日、移動要塞を含め ファング・オブ・キング恵などを 除いた最強の軍レオは、 たった一人の少年によって 壊滅させられた....全てを壊した 将は、返り血で真っ赤に染まった自身の 身体を映し出す愛の亡骸の入った ケースを担ぎ要塞から脱出して、近くの街に 身を潜める...そして、その街に 彼女を埋葬してから....数日後 彼は復讐を胸に... 『エンシャント・クローズ』を身に 纏い果てしなき闘いの旅に出る...。 …記憶の遡りもこれまでにしよう... ...自分と向き合う強さを手にした 少年の闘いは...今ここから始まるのだから 両親を殺し最愛の者を殺す原因を 創った...いや全てを狂わせた ファング・オブ・キングをこの手で 殺す為に…。 重い瞼を押し開けた 将は、再び復讐を胸に刻み込み ベットから静かに起き上がった!!! [第7話] 『放たれし憎悪』 終 to be continued... [第8話]を見る? |
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