『1月13日(土)』 第五三九話 『退廃の緑〜C〜』(1.13.土) 『勇二』『光助』『知也』『洋子』の4人は 『高原地帯』へと先に進み そこで都市『エキドナ』を目指して いた途中だった、が先行したトモからの説明と 彼が背負って来た気弱な犬獣の少年の 情報により彼らは街が既に荒廃し、その 滅び行く様を目の当たりにしていた者から 今、全てが語られる... “動脈の玉座”と呼ばれる間に青年は 足を踏み出すと同時に主から声を徐に掛けられた... 「...半身....。」 [そぉ...我が半身よ...良く、舞い戻った...。] 銀の体毛に覆われた狼が玉座に横たわり 鋭い眼光で場を圧倒する... 「お前は....“ジブリ”なのか?」 [....いかにも...マスター。] どよめきが巻き起こる、支配者に殺させようと していた『堕落した犬獣』【フォール・ハゥンド】は 特に声を大にして遠吠えを上げた...。 「もっ...まだ...待っているの?」 それは雨の降る日、7の月に入ってからは 世界中が悪天候に見舞われ 安定した天気など一つも無かった、しかし 「.....。」 「10年も一緒に居たものね...。 でもあの子は自分の寿命を知っていたのよ...。」 ザーザーッと耳なりのように 学校の部活帰り制服姿のままの青年の肩に 滴が舞い落ち頬からこぼれ落ちる どうしようもない涙を静かに隠す... 「...ジブリ...。」 青年はその日、いつもじゃれついて 自分の側に居てくれた筈のシベリアンハスキーの 帰りをいつまでも待っていた...だが、 「...『玲』【レイ】...レィ!!! 何処なの?風邪をひくわよ...。 ねぇ、玲ぃッッ!!!!」 母親が庭から目を離した、たった一瞬!! 落雷が場に落ち、閃光が世界を支配した …その瞬間!!!… 『カヒュッッッッッッン!!!!』 青年は現世から異世界へと移行を果たす!!! [玲、君なら『幻魔』達にも 負けずに平然と私の下まで 来てくれると信じていたよ...。] 青年は何も言わずに感情のまま 身体を動かし、会いたかった愛犬に歩み寄り 顔を押し付けこれが夢ではない!っと悟る... 「...もぉ...どこにも行かないで...。」 そして、そう呟くと徐に涙を流す...。 『1月14日(日)』 第五四〇話 『退廃の緑〜D〜』(1.14.日) [おぃ...どうすんだよ...コレ。] [俺が知るワケねぇだろぉ!!] 支配者と青年の会話に動揺する周囲の 『幻魔』達は口々に彼の存在を危険しする 「...ふっ..どをやら、ここでは 歓迎させていないらしいな...。 “ジブリ”...君に迷惑が掛かるのだろ? だったらーーーー」 青年は狼の立場を気遣い、洞穴を後に しようと側を離れ振り返る...が、 [待つんだ、『玲』...。 私は貴方が来るのを待っていた...。 っと言ったハズだ...。] 言葉を遮り尻尾で行く手を塞ぐと 徐に立ち上がり囁き、場に圧力を掛けた!! 『ヴァオオォオオオッッン!!!!』 [私の方針に意義のある者はーーーー この場で喰ろぉてやろぉかっ!!!] 静まる洞穴、それを確認すると再び玉座に 舞い戻り、青年を見つめた...。 「...そう、ジブリも...落雷に撃たれたんだ...。」 玲は、死を覚悟したジブリが家から出て 横たわり息絶える、その瞬間に自らも受けた落雷に よってこの異世界へと移行された事を聞く... [...生かしてくれた...私はそう思って いる...また貴方と出会う為に...。] 支配者は“動脈の玉座”が間から全ての 幻魔を追い出し青年と2りっきりで 気兼(きが)ねなく会話を続ける... 「でも、...どうして、彼らと居るんだい? ...まだ来たばかりで良く解らないんだけど...。」 [それは私とて同じ...しかし、玲 感じないか?...これは私の役割の 様だよ...詳しい事は解らないが...私は この為にこの世界に存在し、“力”を得た...。] 本能でジブリは世界の理や自分の果たすべき 使命を感じとっていたのかも知れない... 「ふふっ、喋れるだけでも...嬉しいよ...。 君が何であるかなんて関係ない...。」 [そぉ...やはりマスター...貴方も こちら側のモノなのかも知れない...。] 「え?....何の事???」 そして、本来青年に伝えたかった話しを 唐突にジブリは語る...。 [...私は本来尽きるはずの寿命を 長らえて生きている為に...。 この洞穴の中以外では実態化が出来ない...。] 「!?!...でも、それじゃ...いけないのかい?」 優しい笑みを向けていたさっきまでの ジブリはそこには存在しなかった....もっと 邪悪で醜悪な何かがそこには確実に存在していた [...玲...私はこの世界で得た 力でそれを演じていたい...。 それが貴方といられる唯一の方法...。 お願いだ...私に力をーーー] 「解った...もぉ、良いよ...君は 一人じゃない...此処で共に暮らそう...。 ジブリ...君の力となって!!!」 しかし、青年はそれを承知で最後まで言葉を 聞かずにゆっくりと返事を返した!! 『1月15日(月)』 第五四一話 『退廃の緑〜E〜』(1.15.月) 『エキドナ』の街に震かんが走る!!! 銀髪の青年がアコーディオン手に訪れた その日、獣人の住民...特に大人達は突然 気が狂った様に彼の音と歌に合わせて 暴れだし、争いを村々でも引き起こす!! 「…さぁ〜皆で踊ろう、死の踊りだよ〜 愉しく死のぉ〜、ゆるりゆるりと ゆっくり狂おう、地獄の宴を始めよう〜 くすっ、っとあははと笑ってご覧よ〜? ほらほら足元に君の死が〜…。」 『おろろぉ〜〜〜ん!!!オロロ〜〜ン!!!』 困惑する殆どの“能力者”達は事態を飲み込めず 只、唖然と崩壊の様を垣間見ていた...が、 「嘗めんな?この...『グファイヤ』様が 貴様みたいなカマ野郎...の好きにさせるかよ?」 “対幻魔-実戦鍛錬所-”にて鍛えられ、更に この地の統治者『シシ』により英知を 得た長身の青年は、雑踏をかき分け 銀髪の彼が再び歌い始めようとした、だが …次の瞬間!!!… 『ザキャァッッッッ!!!』 「...話しには聞いていたが...大した事もない。」 「けっ...そんなぁ戯れゴトぁ、 その肩の傷を見てから言うんだなぁ? このクソカマ野郎!?!」 巨大な鎌を手に猛然と攻撃を仕掛け 彼の右肩をえぐる様に斬り裂く!!! [おれら『堕落した犬獣』【フォール・ハゥンド】達 いつでもご主人に扱ってもらえーーー] ハイエナの様な毛色をなびかせながら 一匹のフォール・ハゥンドが銀髪の青年の 横に颯爽と姿を現し、言葉を待つ...すると、 彼は言い終える前に腕を膝まずく『幻魔』に 向け、ニコっと笑みを返しながら 「君らがまだ出る必要はないよ? ...それに、彼らを無闇に傷つけては いけない....これからの役目があるんだから。」 [承知致しました....。] 斬り裂かれた右肩から滲む血液を味わう... 「けッ...人間のクセしやがって...。 幻魔のSideに付いたぁぁぁああ 出来ぞこないのカマ野郎がぁっっっっ!!!!」 そして、勢い良く大振りで襲い来る青年の大鎌を 彼は微笑みをこぼしながら避け去ると 同時に、背後を取りーーー 『めきょっ!!!!』 「...少し...眠っていてくれ....。」 「うぎょぃいい!?!この“力”... 貴様ぁ...化け物かぁっ!?!!」 足払いで地に膝を付けさせると、首筋を 後ろから思いきり人外の力で締め上げ 一瞬で失神させてしまう...。 「....フォール・ハゥンド達よ...。 これから、シシを殺す...いや、侵すのかな?」 士気を欠いた能力者達等に手間取る事無く 銀髪の青年はアコーディオンの音色と 共に歌を唄い、後の『淫獣牢獄』... “対幻魔-実戦鍛錬所-”とそこに存在する シシの精神を崩壊させる為に幻魔達の兵を 率いて乗り込んで行く!!! 『1月16日(火)』 第五四二話 『退廃の緑〜F〜』(1.16.火) 「ふざけっっーーー....。」 鍛錬所内部にたった一人で堂々と乗り込む 銀髪の青年はアコーディオンが奏でる 音色に狂う獣人達と、もうひとつ彼の中に 眠る“ジブリ”の“能力”を使い、次々と 敵対する筈の能力者達を外傷を与えずに 戦闘不能へと追い込む... 『おろろぉ〜〜〜ん!!!オロロ〜〜〜ン!!』 「...さて、此処に気配を感じる...。」 青年の足が不意に止まり、背後からの 気配を感じ、徐に横に身を反らす...すると、 『ガキュォッッッッン!!!』 [ほぉ....中々の運動神経だなぁ? おしぃ...その“力”...何故に、『幻魔』達に 使う?....まぁ、無駄だろぉがなぁ!!!] …その瞬間!!!… 鋼鉄の爪を持つ『高原地帯』が統治者、 獅子の獣人『シシ』が唐突にその姿を現し 自慢の剛腕と爪で彼を打ち砕く筈の攻撃が 瞬時に放たれ、代わりに通路の壁が 一たまりもなく粉々に砕け散る!! 「....ふっ。」 更に統治者の連撃は続き、外した技は 触れた全ての壁を破壊する 『ベキャァァァッッ!!!』 [くわっははははははっっっ!!! 防戦一方ではないかぁ!!?! 恐れおののきながら死んでユケぇっ!!!] しかし、彼はそれらに対して感情 すらも微動だに魅せず、軽く避けながら 広い場所へと誘導するように足を進める...。 [はぁはぁはぁ....!!!] 「どうしたんですか?...。 もう息が上がっている様子ですが...。 さて、貴方にだけは特別に狂って 頂かなくてはならないのでね...。」 彼らが闘いを続けている最中、既に手配され 幻魔の統率された軍事行動により『エキドナ』は 壊滅、更に能力者達は一人残らず捕らわれ 鍛錬所も崩壊の一途を辿る [ほざけぇ....オレ様の真価...。 『鋼鉄武装』...これに耐えられる モノなら....耐えて避けてみやがれぇっ!!!] 物凄いホウコウを上げるシシに併せて 爪の様に全身が鋼鉄に包まれ彼を覆う、そして それに青年が平然と見とれていた …次の瞬間!!!… 『ヴぁぎょっっぉおおっん!!!!』 「ぐふぁ!?!...まさか?! 攻撃速度が大幅に上がっている?!!」 動きが遅くなると踏んでいた彼に向かい シシは、鋼鉄を纏った身体で勢い良く 予想を遥かに超えた速さで突っ込み 避ける間も与えずに彼の肉体を一撃で壁に めり込ませてしまう!! [盲点よぉ?...オレ様の鋼鉄は 全て体毛を鋼に変換させている...。 つまり強度は違ぇど、重さは同じ...。 そして、毛並みが揃ったコレは風の 影響を受けずに逆に速度を加速させる 事もーーー可能なんだぜぇ!!!] しかも、そこから頭部を右手で押さえ付けつつ 青年が血反吐を吐こうがお構いなしに 足による攻撃を喰らわせ、最後にはーーー 「げふぁっ...なっ...なるほど...。」 [...置物にしてやんぜぇ!!!!] 『ばきょっ....ばきょきょ!!!!』 押さえていた頭から徐々に体内と外側を 一気に鋼鉄化させて行く!!! 「?!!...これほどーーー---」 完全に掌握した勝負に上機嫌なシシは、 兵(つわもの)だった青年の身体に能力を 注ぎゆっくりと時間を掛けて鋼鉄の像へと 変化させて行く...だが、しかし [...ぬ?...何故だ??? ...オレ様の力が....逆流だと!?! 逆に腕が白金と化しているだとぉお?!!!] …その瞬間!!!… 『ぱしぃぃっ!!ビキキッ!!!』 「.....。」 [ぐわつっ!?!!バカなぁっっ!!!!] 異変がシシを襲い...逆に自らの腕から 白金へ躯が塗り固められて行く!!! まだまだ続くのですぞッ!! 『ノリがもう、めちゃめちゃで〜ッ!!』 先を見るんッスねぇ〜!! |