『9月9日(月)』 第一一四三話 『天上天地即ち光〜恐れる痕〜』(9.9.月) 「...やっぱり、キミも来たわね...。 来ると、信じていたわ...。」 廃虚となったビルの薄明かりの中で 足音だけで彼を確認した少女は 静かに声を上げて自分の居場所を示した 「はぁはぁはぁはぁはぁ!!! ....うっ...うあああぁぁぁっっ!!!!!」 彼の様子は何処か違っていた それは、誰が見ても解る程...無惨だったから... 「どっ...どうしたの? 傘もさしていないし....。 具合でも...悪い???」 恐れながらも少女は声を掛けて 歩み寄らんとする、しかし 「オレに...オレに寄らないでくれ!! ....やはりオレは化け物だった...。 お前にまで拒絶されたら...オレは...オレは もう....存在出来なくなってしまう!」 彼はこれを拒絶し、喚いて 涙を流した...只、唖然としてこれを 暫く見つめる彼女だったがやがて 今まで見た事もない相手の姿をまるで 包み込む様に優しく背後から手を回し抱きついた 「キミがどうあろうと...キミはキミだ... そんなキミを私は愛した...。 世界がキミを嫌おうとも...私が守ってあげる... キミの居場所は...私が創る...だから、 キミも私の居場所になっておくれ...。」 その囁きで落ち着いたのか 彼は、自分の秘密を口にせんとする... 「オレは........お前だけに.... ......解った....話そう...。 オレは...産まれつき...全ての触感が失われているんだ...。」 自分は...触覚機能が失われて...いるのだ、と...。 『永遠の氷河期』【エターナル・アイス・エイジ】へ 分断した一行が訪れてからもう、かなりの 時が経過していた... 「ぐっ....はぁはぁはぁはぁ.... 僕の攻撃が尽く...!! 何故だ...!?」 各々が宿敵と向かう中で 『月乃』は、自分の『スキル』【特殊能力】が 唯一『マスター・オブ・ナンバー’ズ』【死真神】を 束ねる『裏月乃』【リバース・ツキノ】へと 効果を示す事を心で理解し死を覚悟で 闘いを挑むのだが、それを『京香』に 阻まれこれは失敗で終わる、だがしかし 「身体能力からして、全て けふらは、どんな“能力者”達よりも 上と言えるでしょう... それに、そちらは完全な素体ではない... さぁ、動きを止めますよ?」 此処で内面の変化が起こったのか、キョウへ 取りツキし男は彼を逃がすと 自分も“Penta”五護星 の独りと対時する!! 「「…なめるなよ?…。 小僧...傷など、一瞬で治癒可能!!...。」」 『どしゅぱぁぁぁぁぁぁっっっっん!!!!!』 「そんな事は百も承知です、しかし 自分の肉体でなければ...。 まして、キミは今や、憎しみにも欠けている... 悪意は怨念が“力”であるハズ、それを 失ってしまった今のキミは、只のカスだ。」 肉体と精神のブレが大きくなっているのか? 次第に口元まで衣服で覆い隠した 人物の攻撃が鋭く始めた矢先、トドメを避けた 彼女へ追撃のブーメランが襲いかかる!!! 「...くっっ、はゎ.....流石に 雪の中走るのは...。 しんどぃねぇ〜...っと、こっちで良いのかな...。」 凍れる大地をどてどてっと走る者の姿が そこにはあった、寒い中でも 額に汗して走る彼は、やがて血塗れで 倒れる『礼奈』の姿を発見する...。 『9月10日(火)』 第一一四四話 『天上天地即ち光〜即ち光〜』(9.10.火) 「...あたしは...そうか...。 (...此処は精神の鉄格子とでも 言った場所...なのかな?...。)」 ヒョウイされた時、『京香』の精神は 幽閉され自由を奪われていた 「...まかさ、あたしが... 弱さを付け入られるとは...思いもよらなかった ...でも、あたしがいなくとも...。 外にはみんながいる...少なくとも、あたしは ...彼らの前で偽ったりは、していない...。 それだけ解れば十分よ?...。」 少なくとも、戦場を後にし『礼奈』を 打ちのめした時までは... 「既様...それで良いのか? わしに肉体を乗っ取られているのだぞ!?」 呟いた少女へ不意な声が掛けられた 「...君は...ふっ..どうしたんだ?...。 今更、あたしと会う必要などないだろう...。」 そっけない態度の少女へ構わず 「何故?何故..だ?! わしは今になって...解らなくなって しまった...あの、憎しみに縛られていた わしは...徐々に解放されつつあるのだ...。」 返答を求め、問を『月乃』と闘いながら続ける...。 「...あたしが、例え敵として回っても みんなは、あたしを助けてくれる...。 最悪でも、君を倒してくれる...世界を救ってくれる!!...。 勿論、慈善事業がしたいワケじゃない...。 ...みんなと居る場所だから、彼らは守ってくれるんだ!...。」 「何故そこまで信頼出来る?!! 既様らは、寄せ集めの集団に過ぎない! しかも、『異界の闇覇者』ら等 かつての憎むべき敵ではないか!!!」 ひと呼吸置いて、彼女は語った 「...君がどんなに偉い歴然の人物かも知れないが...。 敢えて、あたしは...声を大にして言っておく ...キサマにあたしと、その仲間達の過ごして来た 年月をとやかく言われる筋合いは ...まったくない、皆無だ!!!...。 あたしを否定するのなら、あたしも君を全力で否定する... ...その生きてきた全てを!!...。」 勿論、こんな面を仲間に魅せた 事も無いし、自分がこんなに感情的になっていた それを内面でキョウ自身が驚いている程だった 「そうか...そんな、熱い心を持った モノの中に入った事が間違えだったのかもしれないな...。 わしも感化されたのか...いや、あの呪われた 移し身を捨てた事で漸く...ヒトとしての 心を取り戻せていたのかもしれん...。」 暫くの後、頷いた男は清々しい 横顔を見せて続けて、そう言い残し 「わしも、全てを見せ合える友がいれば あるいわ...いや、もう過ぎ去りし過去よ...。 そして、わしは、亡霊なんだ...それが はっきりとお前さんのお蔭で理解出来た...。 肉体は返そう、しかしその前に...自分の中の 最後の光を解き放つ術を伝えよう!!」 自分の決断を伝え、協力を願った...。 「...あたしも、あいつらと 会って変わった...。 ...もう恐れない...あたしの中の“力”...。 君に預け、そして...見せて貰おう!!...。」 「ふっん...子娘が生意気言いおるわい ...じゃが、悪くはないの...ぉ...。 わしの闘い、とくと見ておくがいい!!」 そして、光を得ん為の死闘が最後の幕を開けた!!! 『9月11日(水)』 第一一四五話 『天上天地即ち光〜遅いぞ!この野郎〜』(9.11.水) 「はぁはぁ....っと、....あぁっっ!?! (...血だらけだ...アレじゃあ...。)」 駆け寄る物体はカキ氷のシロップ(密の意。)がごとく 意味合いをか持ち出す程の出血を見せ 苺色に降り積もりし雪を染め上げていた 「....うっ....ふっ....。 .....そろそろ...死ぬのかな...私...?」 一瞬のフラッシュバックの後 …「こんな所で...返してよ!! わたしの娘を!!!この化け物!」… そこにはまったく、別の異型へと 変化させられた、かつての人間であった 肉塊が存在し...場には雷をシルエット(移し影の意。)として 笑顔を無くした彼が立ち尽くしていた 「おぃ...おいっって!!! もぉ...何で...何、手首切られてるんだよ!! らしくないじゃん! キミらしくないじゃん!!!!」 最後の走馬灯が終わる時、少女の命の炎も やがて尽きんとしている場所へ 眼鏡を掛けて小太りの少年が現れる...。 「駄目だ..ボクじゃあ.... 治癒の“力”は持っていない!! ...でも...でも、まだ.... くそう...このまま、ただ...黙って 仲間が死ぬのなんて...待っていられない... うんうん、いられないよ!! ...お願い...誰か...はっ!? (あの時と一緒だ....ボクは...。)」 ボクは昔...仲の良い子を見殺し同然にして 置き去りにしてしまった事があったんだ.... 「嫌だ...もう...あの時みたいに 逃げたくない...。 でも...ボクには.....!!!」 でも、ボクは『キョウ』との関わり合いで もう嘆くのを止めた、諦めるのを止めた!! 「...ボクの力は、他者の命を奪う事が 出来る...全ての寿命を!! なら...もう一度...力を貸して! 『V・D』【バニッシュ・デス】...。」 『ジュシュパァァァァァッッッッン!!!!!』 死ぬ事を刈り取る事がボクには出来る... うん、出来るハズだ!! 殺さない事だって、今まで奪った命を還元させるんだ!!! それは、最後の懸けだった... 彼女には永遠とも思われる記憶世界の旅の時間 「...うっ.....くっ.....。 私は.....まだ...?」 「うん...うん....生きてるよ!!!!」 それも終演を迎えた様だ...そして、 「ふっ...死に損ねた、か...。 それにしても...来るのが遅いぞ?」 開口一番の悪態が『真』へと放たれた!! 『9月12日(木)』 第一一四六話 『天上天地即ち光〜夕焼けと再会〜』(9.12.木) オーストラリアの戦いから続き、離れた これらの出来事が過ぎて、唯一 正確に時を刻む南極で燃える様な 夕日が刺して世界を茜色へ染めていた 「死を刈り取ったんだ... これで、まず死ぬ事はないと思うけど それでも...ギリギリだよ?!」 「十分だ...私にはどうしても やらなければ、いけない事がある...。 『真』には悪いが...戻るんだ...皆の下へ。」 そこで、彼女はやはり彼の下へと行かんとする...。 「...何があるのか知らないけど このままキミを...みすみす進ませるわけには いかないよ...ボクだって キミの友達だよ...少しは頼ってくれても良いんじゃない?!」 「?!...ふっ...そうか、そうだった... 私は良い友達を持ったわね? ...良いわ、お願い...私を彼の.... 『我意』の下へ連れて行って!!」 静かな、でも力強いその言葉に 押されて『礼奈』は彼の手を取り 自分の目的たる建物の中へ存在すると 思われる男へ再び会う為、協力を 乞い、そして真はそれに頷く...。 「....お前が何を求めているのか...? 世界は...もう直ぐ...。 一変する....来るべき時は過ぎたのだから...。」 マントを羽織る人物は呟くと 暫し、瞼を閉じて彼女達の到着を待たんとしていた...。 まだまだ続くのですぞッ!! 『ノリがもう、めちゃめちゃで〜ッ!!』 先を見るんッスねぇ〜!! |