『1月21日(金)』 第一八一話 『目覚めの蜜』(1.21.金) 「...そうだね...まぁ、立ち話しも なんだし、あんた達も座ってよ。」 『三橋 麗魅』【みはし れみ】は、 この『海岸地帯西』の統治者『キエル』の 眠る液体の溢れたケースから手を 離し、徐に側にあるソファーに4人を 座らせ自分も座り...暫く、間を置いてから 彼女は、何故こうなってしまったのかを 簡単に語り始めた... 「...あたいは、もう一人...この街で 知り合った元の世界の奴と、一緒にキエルに 出会い、こんなになる前の綺麗な街で、 この地帯の支配者が放つ 『幻魔』達と幾度か闘いを繰り広げて いたの...そして、あの日...全てを 知ったうえで...あの支配者を 打ち倒そうとした...前日だったわ!!! 唐突に現れたあいつは、キエルに 呪いをかけ...彼と共に消え去った!!!」 レミは興奮のあまり顔を赤くして ソファーを殴り付けて、叫んだ...。 「なぁ、レミ?...だいたいの話しは 解ったんだけど...それで、なんで キエルに呪いがかけられると、街は こんな事になってしまうんだ?」 『知也』が静かに少し 落ち着いたレミに質問する...すると、 「彼女にかけられた呪いは、永遠に 目覚めぬ毒の呪い...彼女は眠りながら 体外へ永遠に毒を流し続ける....。」 彼女は、ゆっくりとそう答えて ソファーを後にし、ケースの中の キエルに手をかざした... 「...そういう事か...その純水で常にキエルの 回りを満たしておかなければ... 彼女はたちまち自分の毒に犯(や)られて しまい...死ぬ...だが、そうすれば ヘドロの様な水が溢れ....。」 『京香』は、ケース下に繋がっている パイプが直に川へ送られている事... 更に全てを理解して、そう呟く... 「その通りよ...だから、キエルの 呪いを解く為に...でも、あたい一人 じゃ...あの塔にも入れなかった...。」 レミは、窓から正面に見える、2つが 曲がりくねり絡まる塔を睨み付けながら 自分の無力さに打ちひしがれていた...。 「...簡単な話しやないか...!!! つまりや...俺様達があっこにいる バカ共をブッ殺せばえぇって事...やろ!!?」 颯爽と立ち上がった『智明』は、 横目で『春化』を見ながら そう言い放つ、すると 「まっ...そう言うことだわ...レミさん この『P × H』にお任せあれ!!」 それに影響されたのかハルカも 立ち上がり、レミに声を掛ける!! 「!?!!...でも...。」 更に戸惑う彼女に向かい 「やるしかないっしょ...この場合!!」 「ふっ...このまま黙って見て いられるほど...あたしは、大人しく ないんでね...!!!」 トモとキョウも立ち上がり、その塔に 乗り込む意志を現す!!! 『1月22日(土)』 第一八二話 『彼氏彼女のペア決定!!』(1.22.土) 「有り難う...5人なら、あいつだってーーー」 『麗魅』が4人の言葉を聞いて、感動し 共に自分も闘うと言い出す前に... 「五人?...4人の間違えやろ?」 それを遮る『智明』は、他の3人に 目を向けた... 「どうして!?あたいじゃ役不足 だって言いたいワケ!!?」 智明の発言が気に入らないレミが そう叫ぶ、すると... 「レミ...貴方までがいなくなったら もしもの時に此処と『キエル』を守れる ヒトがいなくなってしまうでしょ?」 それを落ち着かせるように『京香』は、 言い放つ... 「...でも!?」 「他人を信じる事も大事だよ?」 「レミさん、ここは任せてよ!!」 「...負けたわ...解ったわよ...。」 更に『知也』と『春化』に説得された レミは、漸く納得したように首で 頷(うなず)き返事を返していた...。 「あの塔は通称『蔦の塔』 (つたのとう)【ラズベリー・フォー】と 呼ばれているわ....奴が...この地帯の 支配者がキエルと彼を奪い去った後に 廃虚と化していた二つの塔を組み合わせて 作り上げた塔なの...。」 討伐を4人に任せる事を承諾したレミは、 徐に塔に関する説明を始めた... 「...ってことは...もしかして 入るとこも???」 「そう、だから入り口も当然二つある... あたいは、郡勢を相手にしてて 門前払いを喰っていたから どっちの塔の入り口が最上階に 繋がっているのか?とか解らないけど...。」 トモの質問を答えたレミは、 話しを続けた... 「...大体わかった...つまりや... 2人一組で分かれ突っ込めば えぇんやろ?...どっちかの組が 支配者の部屋までいければ!って事やしな!!」 「イグザクトリー !!!」 レミの話しを聞き終えた智明は、 そう呟きさっさと部屋を出て行って しまった....。 「キョウ...どうする?」 「ハルカは任せた、あたしは、アレと 組むよ、あっちのが性に合っているんでね。」 智明の後に次いでキョウも部屋を 出て行く...そして、残った二人も 「私は、最初っから、トモに 決めてたわよ。 だって〜顔も体型もイイじゃん!!!」 「そりゃ、どうも。」 そんな会話を交わし、塔へ向かい 部屋を出て行った... 「...お願い...二人を助けて...。」 4人を窓越しに見送ったレミは、 彼らが支配者を打ち倒し 再び無事此処に帰って来る事を 信じ、祈りを捧げた...。 『1月23日(日)』 第一八三話『鏡の部屋』(1.23.日) 「本当に入り口が2つあるんやなぁ...。」 『蔦の塔』【ラズベリー・フォー】の 入り口前で、そう呟いた『智明』は、 「...説明通りね...。」 『京香』と共に左の扉から塔内部へ 潜入して行った... 「どっちかが辿り着けば....か、 『ハルカ』?準備は、イイ?」 「もちろん!!!」 智明達の後を追って来た『知也』と 春化は、右の扉から内部へ!!! 「...それにしても...やけに手薄だと 思わないか?ハルカ???」 「そう言われてみれば、そうね...。」 右の扉を潜り塔の階段を上る 二人は、妙に入り口の門にすら 敵が存在しなかったことに不気味さを覚える... 「...あっ...もう、階段が終わった...。」 「...ーーー!?...気を付けてトモ!! 嫌な...嫌な気配を感じる!!!」 階段を上がり切った二人を 待ち受けていたそこは、明かりも 照らされず、闇に包まれた不気味な 部屋だった!!! 『ぱっっ!!!』 突然!!照明が部屋を照らし 闇を掻き消す!!! 「...!!?...なんだ...この部屋...!!!」 「...鏡...ミラーハウスみたい...。 (もしくは、ラヴほの....(照))」 すると、そこには貴金属で出来た床下以外 ...全てが鏡張りにされた部屋が姿を見せる!! 「...結構広い部屋なんだな...。」 手探りで前に進んで行くトモは、 不気味なその部屋をさっさと 抜けてしまをうと、前へ進む...が、 「あれ!?...トモ....一緒に 歩いてるヒト...誰...!?!」 いきなり横で共に歩いている筈の ハルカに、後ろにから声を掛けられ戸惑う!! 「...なっ!?...ハルカこそ...その 隣の男は...ってオレ!?!!」 更に振り返ったトモは、自分と まったく同じ姿をした少年といるハルカを 見て、思わず声を上げた!!! 「そうか!!...シャドウ!!!」 トモの声で大体を悟ったハルカは、 手にした『霊聖坤』で勢い良く 横に自分と並ぶ少年を攻撃する...が、 {くくっ...良く解ったねぇ〜!!!} 『バヒュァァァッッ!!!』 実態を掴めない、その手応えに 異変を感じ、回り全ての鏡を打ち砕く!! 『バキャキャキャキャッッッン!!!』 すると、トモの横にいた 自分と同じ少女も掻き消え... 目の前には、新たな階段が出現した... 「...派手だなぁ...ハルカ...。」 「まぁねぇ...てか、先に...これを 仕掛けたバカがきっといるわよ...。 あの声の主が....!!!」 どうやら、鏡で錯乱させた中で 二人を同時に殺そうとしたらしいが... それは、一瞬で見破られ、失敗に終わる... 上の階で全てを操って、仕掛けた 人物は、それを見て嬉しそうに 「...早く...来なよ...くゎいがって〜 あげちゃうからぁ〜〜〜!!!」 自分までの到着を待った....。 『1月24日(月)』 第一八四話『いや、全然。』(1.24.月) [ぐひゃひゃひゃ〜〜〜!!! 俺様を倒す事なんてとーてぃ不可能 なんだよぉ!!!] その頃、左から塔を登っていた 『京香』&『智明』は、階段を登り切った 直後自分達を待ち受けていた 『幻魔』の罠に掛かり 身動きを封じられていた!! 「...なるほど、泡を一瞬にして 硬質化...したのか....。」 大きな鋏(はさみ)を片腕に持つ 幻魔『憧憬の蟹』【ダット・クラブ】が その鋏から繰り出した無数の泡は、 彼らの全身にまとわり付き、硬質化して 完全に動きを封じる...だが、そんな中でも キョウは、冷静に冷めた口調で 成分の分析を開始する。 「海洋生物が考えそうなセコイ 攻撃の一種だ、蟹...そうだ、甲殻類に 多く見られるな。」 「せやったんか〜...ん〜...勉強に なるなぁ〜...って!!! 早よこの状況をどうにかせな、 まずいヤロ!?!?」 キョウに突っ込みを入れて慌てる 智明を見て嬉しそうにダット・クラブは、 [くくくっ!!!何とでも言えっての...。 女...お前から最初にこの鋏で 切り刻んでやるよぉ?] 鋏を上下に動かしながら少しづつ キョウの下へと歩み寄る...そして、 …次の瞬間!!!… 『バギュァッァァッッ!!!!』 [うごぎょ!?!!] 自慢の赤い鋏をキョウの首にかけた ダット・クラブのその鋏は、 力を込めて彼女の首を跳ね飛ばす前に 突然!!空中を舞う!!! 「...身動きを封じた程度で勝ち誇る …など… お前には、一生早いよ!!!...。」 更にキョウの“能力”で逆に自分の 硬質化した泡から産み出された鋭く 大きな刺がその身を貫く!!! [ばっ!?...ぞんなぁぁぁ!!! ...ざっき...男の方が〜あぜってぇぇえ!!!] 「...あっ?...いや、全然。」 [そん...うぎゃぁぁ!!!] 歪みに沈む間際に発狂しながら 叫ぶダット・クラブに智明は、そう 言い放つと...それにより泡から 解き放たれ、自由になった身体を 動かしながら、横目でキョウに合図を 送りつつ前へ足を踏み出した... 「...ったく、勝手な奴だな...。」 キョウは、それを見て呆れながらも さっさと、目の前に現れた階段を 智明の後を次いで上がって行った...。 まだまだ続くのですぞッ!! 『ノリがもう、めちゃめちゃで〜ッ!!』 先を見るんッスねぇ〜!! |