〓何があっても生き残る....。 外で待っているモノが 例え絶望でしかなくても。〓 |
『キリング・ヘィルダム』 (2004/1/25/Sunday) |
「はぁはぁはぁはぁ....!!!」 「はっはっはっはぁ....!!!!!!」 見るも無惨に散乱する 生徒や職員達の手足... 「大丈夫か?!『勇一』(ゆういち)!」 「はぁはぁはぁ...うっうん....でも もう...走れないよ....。」 それらを彩る様に溢れ返る鮮血 「弱音を吐くな!!...行くぞ!」 「はぁはぁはぁ...まっ待って.... 少しだけ...少しだけでも休ませて...。」 血溜まりの中には、息を切らして 肩で呼吸する2人の学生らしき 少年の姿が映し出されていた。 それらは何の前触れも無く出現し 「おぃ...キミは何だ? .....部外者は立入禁止...ひっ!?!」 ソレは何の予調も無く、始まった!!! 「それ...オレの腕だよな...あぎゃっ?!!!」 只、一方的な殺戮ッ!破壊ッ!! 「おっ...おぃ....誰だよ..お前クラスの奴じゃ...ぎぃッ?!」 「誰か!!先生に..ひぅあぎっ!?!」 「たすけ...助け助け...たすけああぁっぁぁッ゛ッ゛!!!」 授業が始まりの合図を告げた直後 担当の教員が廊下で見た人影は 数分後、その人間を喰らっていた 「何だよ?!どうしたんだよ!!」 惨劇を目の前にした1人の生徒が 震えながら教室へと飛び込み 後ろの扉に鍵を掛ける様、指示する 「顔色すっげぇ、わりぃけど...?!!」 その少女が飛び込んだ、っと同時期で 喚きとも歓喜とも取れない 叫び声が、この学園内部へと響き渡って行った...。 そのヒトの姿をした 顔色の悪い人物は、唐突に 教室内部へも姿を見せ始めていた。 「かっ...影から...あたしの影からああぎゃぁあ!?!」 少女の影から這い出たソレは 叫び終える前に彼女の首を乱暴な動作ではねた 『ぶっしゅあぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!』 飛び散る血飛沫が周囲の物体を 朱色へと染めて行く、更に呆然と これを見つめる生徒達へ薄気味悪い笑みを 浮かべる幼女は襲いかかって行った 「.....何だよ五月蝿せぇな...。」 影から産まれ居出たかのごとく見えた ソレらは、まるで自在に 何処からでも現れ、教員を含む生徒達を 楽しむ様な仕草で追い詰め殺しては この血肉を貪り喰らっていく... 「うぎゃぁあああああ!!!!!!!」 そこでオレは目を覚ました。 声だ、耳にまとわり付く様な声 「うぉお.....おおっっっ!!! なんだ....なんだぁぁっっ!?!!」 それがオレの生存本能を刺激したのかもしれない とにかく、オレはやっと自分の置かれている 立場と危機を理解した。 オレの名前は『倉敷 尭示』【くらしき たかじ】 この時まで普通の、何処にでも いると思う、高校生だった。 「クラちゃん!!!!!....たすけてぇっ!!!」 この、情けない女の様な声を出して オレに助けを求めているのは 『明日乃 勇一』【あすの ゆういち】 オレの幼馴染みだ。 「勇一....おぃ...やべえっっ!!」 こいつは声だけでなく顔まで 女顔をしている、だから小さい頃から こんなんだ、だからオレはコイツを守って来た。 「助けて....ううっあああぁっ?!!!」 弟みたいなモンだった。 オレと同じ学校へ行くと意気込んだは良いものの 中学は失敗、だがコレがあって励んだ末、この 共学の学園に1年前の春、入学して来た。 「クソッッ...おんなぁっっっっ!!!!」 同じクラスに2年も、連続でなれたのは偶然だった。 いや、進学クラスとは釘打っていても このマンモス校だ、未だに 見知らぬ顔の奴だっているのに...まさに奇跡! っとオレは胸を張って言える。 『とくしゃぁぁっっっ!!!!』 [ぐっ....フアァァ!!!!] そして、人生2度目の奇跡かも知れねぇ オレがとっさに投げたホウキが 薄気味の悪い女の胸を貫いた!!!! 辛うじて人の形を保ってはいたものの ジュウリンを続けるソレら禍々しき モノ共は最早、化け物と 生き残っていた人間達へと認識させるまでに そう時間は掛からなかった 「大丈夫か?!!」 「うっ...うん、でも...こっ腰が抜けて...ーーー」 「良いから!!立て!抜けようが何しようが... とにかくヤベェ!!!!」 間一髪で勇一を救い出した 彼は、周囲から起こる悲鳴の渦を聞き 漸く、この絶望を理解する 「あっあっはははは!!!!」 今ある、恐怖の舞台の渦中へ唐突に 放り出された事が発端で発狂し 自ら死を受け入れる者、コレを 夢とかたずける者、それは様々だが 意志を持って逃げ惑う者ですら 戦慄し、何処かで信じられずにいたのだ 「ゆっ...夢だ...こんなの...どうせ... そっそうだ....夢で死ぬ奴は幸せにーーーぎゃひフっ?!!」 この状況を、眼前の現実を!! 教室を飛び出し、振り返らずに 走り続けた尭示の右手には 勇一の左手が握り締められていた 「ハァハァ...どうなっちまってるんだ.....。」 「.....はぁはぁはぁ...ッっ!!」 無惨にも引きちぎられた かつて、クラスメートや教師であった肉片を 踏み付けながら、さっきまで 毎日放課後にもなれば整理されていた この教室内の惨状を横目に廊下を 駆け抜け...彼はそればかりを呟いて 「クラちゃん...僕...もう走れない..よぉ... ハあッハッはぁッ....はぁはぁ!!」 学園外へ、脱出せんと階段を駆け降りて行った 「もう少し!もう少しで正面玄関口だっっっ!!!」 叫ぶ様に言い放つ尭示だった、が 「ひぃいっっ!!!!!!」 飛ぶかのごとく走り去って 辿り着いた、その場は死体の山で埋め尽くされ 到底、心理的な作用もあって 出入口まで臓物と汚物と汚臭の立ち込める ソコへと向かって行ける筈もなかった。 影のごとき人物達から逃げ回る人々は それ程、多くなく殆どの生徒や教員は 恐怖にかられて、場から動けず みすみす餌となって肉塊となり果てていった 「...みんな、皆...死んでいたね...。 僕らも....もう....。」 「その先は言うな!!」 玄関口の事を見れば、ソコをあれだけの 人間を数分足らずで遊ぶ様に惨殺してしまう程の 強力な何か、がいるのは間違い無かった 「上にあがったって...。」 「どうにかなるか、ならないか...なんて 自分が決めるんだ...!! (オレだって...恐いんだよっッッ!!!!!)」 彼らは再び階段を駆け昇り 今度は最上階を目指したのだ 「....クラちゃん?」 「なんだよ...。」 「僕が襲われても...助けないでね... 独りでも逃げてね...。」 「...馬鹿言うなよ...オレは勇一を守る!! あの時、約束しただろ?!」 その間も人の形(なり)を持つ者共は 死肉を貪り、新たな人間を探していたが 大声で、喚き散らしながら逃げ続ける 数人の集団が襲われている隙を見て 彼は勇一の手を取り、どうにか最上階へと 続くソレを踏み越え鍵を壊して 屋上に出る事を成功させた...。 「少しは休めそう.....でもねぇのか...。」 「どうしたの?..くら...ちゃ...ヒッぃい!?!」 そこには安息等なかった [.....またヒト来た....。] 当たり前の話しだ、冷静な考えを 持っていれば、そこが危険だと察知出来た筈 「喋れるのか...。」 「だっ...駄目...後ろも...もう... もう!戻れないよ...ッッ!!!」 だが、しかしこの状況下では無理と言うもの [...........太股の付け根..美味しい...。] 醜悪な笑みを浮かべ、ソレは ヒトでは追えぬ速さで移動し 『ドコッッッッッッッ!!!!!』 「なっ.....ーーッッうぎゃっっ?!」 尭示を弾き飛ばす!! 「くっ...クラちゃん!!?!!」 [.........イタダキます...。] すっぽりと白いシーツを覆った全身とは 裏腹に、頭部からは長く白い髪が ダラリっと両側で垂れ下がり 顔と思える部分は空気穴のごとく 小さな点として、この隙間から 人間の様な部位を覗かせる、この人物は 「やっ...やめろぉおおっっ!!!」 『ずぐぅうっっっっん!!!!!!』 続けて勇一へと手を掛けんとする、が [ギャフッッ?!!] そこを背後より、跳ね飛ばされていた 場に存在した鉄パイプを手にした 彼からの後部殴打を受け思わず前のめりで アスファルトの地面へと崩れた... 「はぁはぁはぁはぁ...ざまぁみろ...ヴぁーろぉ!!」 「....クラちゃん....僕...泣きそ....う... ーーーーっっぎゃぁぁぁっ!?!」 『ぽたっ...ぽたたっ....。』 [...柔らかい......もっと...もっと...。] 思わず彼へと走り寄らんとした 勇一の左手は、たった一瞬で数箇所が 噛みちぎられ、やがてそこから鮮血を滴らせていた 「あっ...あっあっっっ!!!」 絶叫する勇一を背に隠し 鉄パイプを握り締め再び攻撃を 仕掛けんとする尭示だった、が ……その瞬間!!!!…… [...バォオオオッッッッン!!!!] だらしなく揺れていた白髪のソレが まるで生き物のごとく動き、やがて 小さな隙間穴達は広がり大きく裂けた口となった!! 「うゎっぉおっっッ?!!」 無造作な、その触手たる刃のたったヒト振りで 彼の額と頬は切り刻まれ、鮮血が宙を舞う! 『絶望と知りつつ、次のページを見る?』 |