〓...吹き貫く風が再び、戦場へと 彼らを誘う、それは運命であるかの様に...。〓 |
『キリング・フィールド・アベンジャー』 (2004/1/31/Saturday) |
情けなく喚くしかなかった俺の前には あの大柄の、コートを羽織る男の立ち姿があった 「心配すんな...。 必ず、坊主とお嬢ちゃんの身は守る...。」 奴はこんな状況であっても 焦ってもいなかった、まるで それが当然であるかのごとく 震える俺達を気遣っていた.... 「移動しているわ、きっと 彼女達が狙いよ...ふっッ!!!」 『ドヒュカカッッ!!!!』 [キシャァァッッッ!!!!] キツイ口調の女...要はどうやら 剣を使って内部から天井のソレを 攻撃し当てた様だ、また車内が大きく揺れた ...敵が上で暴れているからだ... {...幾らなんでも、中からじゃ駄目だよ! って......クラちゃん?!} 「何だよ、解ってんだろ? 機械の修理は何度でも可能だが、命はそうは いかねぇ...使うぜ、“ハイラ”!セット!!」 “対・幽魔装甲”とは霊札や霊石を加工し 施(ほどこ)す事で悪霊をハネ除ける 簡易結界を、浄化銀のオーバーコート(上塗りの意。)で 更に重複させて誕生した“幽魔”と戦う上での 最強の防御装甲である、が...しかし 『メキャッッメコココッッ!!!!!』 {オーバーコート破損!!! ...跳弾の心配もソレならない...か... 止まったら“影”に2人が殺られる可能性がある以上 運転は続けるよッ!?! クラちゃん!要!!解ったね?!} これはあくまでも身を持たぬモノを 想定して公案し開発された物であって 「わーってるよ...ちっ...おぃ! 天井、剥されちまったぜ...勇一、お前... アレ程ーーーっもう言う暇もねぇか!!」 「ぐだぐだ言わない! “メキラ”...行くわよ!!」 生者の血肉を喰らい、異形の肉体を得た 幽魔、通称“ハイブリット体”が持つ巨大な 物理攻撃の前では、この効果は 「こっ...恐いよ...アイチぃ...。」 「だっ...大丈夫だッ! ...糞っ...ババァぁっっ!!!」 半分より以下の力しか発揮する事が出来ない... [見付けた...わぁ..... 今度は逃がさない...ふふ...ウフフ!!!] 「先制、頼むわよ?」 「誰を見ているんだ? ....お前の相手はこっちだろ...なぁっ!!」 天井部位はメキメキっと 鈍い音を奏でながら無理矢理、引き剥され 車道へと投げ捨てられた、しかし 彼らも只ヤラれっぱなしのままでいるワケでもない!! [アギョッ?!!!!] この為、内部が露になると同時で 『どきゅあぁぁっ!!どきゅあぁぁっん!!!』 背負うフォルダーより引き出した銀色の拳銃を 構えた彼は、待っていましたとばかり 引き金へと手を掛けた!!! 『びちゃっっ!!びちゃちゃ!!!』 弾丸は鬼の様な形相を浮かべる 赤い着物を纏うソレの左腕を打ち抜き 完膚無く破壊し、続けて 「相変わらず良い切れ味だわ... 肉を切るのは久しかったでしょうに!」 彼女からの斬撃が妙なまで肥大化した 両腕を持つ、少女型のハイブリット体の 残った腕と次いで胴体から真二つに切り落とす 「良いとこ取りか...。 あっ、おぃ側に来るなよ?まだ完全にーーーー」 だがしかし、目の前で瞬断された 幽魔の姿を見んと、前へ出て来ていたアイチが 尭示から注意を受けんとしたーーーー ……次の瞬間!!!…… 「きゃぁぁぁっぁっっっ!!!?!」 まったく予想だにしない場所より 悲鳴が巻き上がる!! {どっどうしたの?!クラちゃん!!} 「ちっ...しまった、なまじ“穀戒”さんの思念が 強く残っていたのが原因だ...。 肉体の破壊を感知した、瞬間に...浄化から 逃げる為でもあっただろうが...移動しやがった!!」 完全な結界ではなくなった力場(りきば)だからこそ 出来た芸当であろう、本来は無理な諸行だ、が [...美味しい...血...ぃ...。] それはやってのけたのだ 「あつなぁぁっっっ!!! ーーーうわッっっぎゃっっ?!」 「無闇に前に出ては駄目! アイチ、貴方が行ってもどうにもならない ...ワタシ達に任せて...まだ死んだわけじゃない!」 強力な霊能者を喰らっただけで 付いた知恵ではない、彼女の死に際を 計って潜んでいた、この狡猾さが ソレを成功させたのだ! 「取り込む気か?! 要!“ハイラ”じゃヤバイ!早く!!」 「解っているわ、けどこの距離じゃ...!」 アツナの肉体を取り巻く 幽魔は彼女の魂へと融け込み 物理的な融合を果たさんとしていた、がしかし これが完了せんとしたーーーーー ……その瞬間!!!!…… 『ばしゅぁぁぁぁっっっっっぁあああっっ!!!!』 [うぎゃぁぁぁっぁぁっぁッ!?!] 突如!!彼女の左腕より目映い光が放たれ 濁った黒き靄(もや)を振り払う!!! 「アンタ....婆ぁ...アンタの...数珠.... 糞!...何でだよ...何で...こんなことに なっちまったんだよ.....もう戻れない... んなことたぁ..解ってんだよ!!!けどぉよぉ!! (それでも....アンタと...過ごせた時間は...!!)」 左腕へ絡み付いてた数珠の力が 悪霊から彼女を救った、それは 孫の様に2人を可愛がっていた穀戒からの ささやかな恩恵だったのかも知れない [.....ぬぉおおぁっぁッっっ!!! もっと、もっとぉおおチカラ...ヲォオ!!!!] が、一時でもアツナの四肢より こぼれる血を喰らった事で再びソレは異形を構成し 彼らの前へと立ち塞がらんとする!!...だが …その時だった… 「アンタに助けられた礼だ...。 5年間....アンタに一回も良い顔してやれなかった ...だからせめて...俺がッッッアンタを救う!!!」 『ズシュヴァァァァッッッッッッッッン!!!!!』 {うっ...嘘ぉ...『大地』【だいち】くんの アノ“ヴァジュラ”を?!} 背後より、両の青白き刃を持つ [グッゎっはゎワッっががっ!!! ....馬鹿な...こんなーっっコンァァッ!!] 宝神具(ほうしんぐ)を何時の間にか 掴み取っていた、アイチの その手から繰り出された一撃が 因縁の幽魔を捕らえ、この存在を浄解した!!! 「そうか、それを使っちまったか...。 しかし、何故...何処から持ち出した?」 静寂の訪れ、走行音だけが 彼らを包み込む..... 「突っ込んで行って....良くわからねぇ衝撃で 後ろっカワに跳ね飛ばされた時...。 手元にあったんだ...。」 アイチの手の中には青白い輝きを失い 元の宝具となったヴァジュラがあった 「彼女は大丈夫よ...。 気を失っているだけ...それに、これで 解ったわ...貴方達が幽魔に山道で ヒョウイされていなかったワケも、ね」 アツナを簡易ベットへと乗せ 要は彼女の安否を伝える 「それは...オレ達のかつての仲間が使っていた 武器だ、オレのコレ『波夷羅』【ハイラ】の様な 封神の名を持った霊力を持つ者のみが 扱える神の宝具....坊主...いや、アイチ...。 お前はソレに認められた様だ」 {“ビガラ”...それがキミ達の大事な人が 守っていて、そしてキミらに授けた物だよ!!} それから、彼はアツナが目覚めるまで 聞きそびれていた尭示らについての話しを ゆっくりと聞き出す事とする 「あぁ....糞、それよりアンタら... さっきの続き、話してくれよな?」 「当然よ...貴方達には、その義務も 責任もあるんだから、ね...。 だから覚悟しなさいね、聞いたらもう戻れないんだから。」 冷たい夜風を突き抜けながら、コンテナ部位が 大きく損傷したトレーラーは宵闇の中を 鈍い光を放ち、誰知れぬ何処かへ向かい走り去って行った....。 「観音開きの封印式を施した....アレが あんな程度の衝撃で、守護札まで外れるかよ...。 ...けど、まぁ2人も今は静かに眠ると良い....」 ...あの時と同じ風が、再び 「残酷な始まりは...これからね...。 まるで、あの時みたいね...この風」 オレを吹き貫き、戦場へと誘う {けど、あの時の何も出来ないままじゃないよ?僕達は!!! あっ!?わぁーっ!夜明けだよ!!} 終わりの見えない戦火の中へ...。 -to be continued. late The last story!!!- 『Dead』or『Alive』 αnd…‥ 『Punishment』 |